住宅ローンを活用する際にはどこに相談すべき?
住宅ローンは、人生で最も大きな支出の一つになることが多いため、ローンを組む際には不安がつきものです。
特に、住宅ローンは長期にわたって返済していくものですから、返済計画や将来の生活設計をしっかりと見据え、慎重に進めることが重要です。
そこで今回は、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点から、住宅ローンを借りる前に必ず確認しておきたい「3つのチェックポイント」をご紹介します。
この記事で分かること
- 返済計画の立て方とライフプランの重要性
- 最適な住宅ローン商品の選び方
- 住宅ローン控除や税制優遇制度の活用方法
返済計画の立て方と将来のライフプラン
まず最初に、返済計画の立て方と将来のライフプランについて見ていきます。
ライフプランにおいて住宅ローンを活用することのメリットや、将来的なライフイベントに与える影響について考えていきます。
住宅ローンってそもそも何?
住宅ローンとは、住宅を購入するために金融機関から借り入れる融資の一種です。
通常、長期間(10年以上)にわたって返済され、借入金に対して利息が付くことが特徴です。
住宅ローンには、以下4つような特徴があります。
①目的特化型融資
住宅ローンは、主に住宅の購入や建築、リフォームなど特定の目的のために利用されます。
➁長期返済
通常、返済期間は10年から35年程度で設定されます。長期間の返済が一般的なため、月々の返済額が比較的低く抑えられることがありますが、総支払額は増える傾向があります。
③金利の種類
住宅ローンの金利には主に「固定金利」と「変動金利」があります。固定金利は一定期間中ずっと同じ金利が適用され、変動金利は市場の金利に応じて定期的に見直されます。
④担保と保証
住宅ローンは通常、購入する住宅を担保にするため、万が一返済ができなくなった場合、金融機関はその住宅を差し押さえる権利を持ちます。また、保証人や保証会社を利用することが求められる場合もあります。
将来のライフイベントを見据えた返済シミュレーション
将来のライフイベントを見据えた返済シミュレーションを行いましょう。
結婚、出産・育児、住宅購入、老後資金、キャリアの変化など、今後予想される重要なイベントを整理し、それぞれにかかる費用を見積もることが重要です。こうした支出を踏まえた上で返済計画を立てることで、将来的に無理のない返済を続けられるようにします。
次に、現在と将来の収入や支出をシミュレーションし、収入が減少する時期や支出が増えるタイミングでも無理なく返済を続けられるかを試算します。たとえば、収入が増える時期には繰り上げ返済を行い、支出が増える時期には返済期間を延ばすなど、柔軟な調整が有効です。
また、予測外の出来事に備え、生活費の3〜6か月分の緊急資金を確保し、保険の見直しを行うことも忘れないようにしましょう。
りそな銀行のライフプランシミュレーションは、簡単にライフプランをシミュレーションできるので非常におすすめです。
ライフプランシミュレーション|りそな銀行・埼玉りそな銀行・関西みらい銀行 (resonabank.co.jp)
返済負担を軽減するためのリスク管理
返済負担を軽減するためのリスク管理には、将来の予測できない事態や経済変動に備え、適切な対策を講じることが重要です。
以下の4つのようなポイントが挙げられます。
①緊急資金の確保
予期せぬ出来事に備えて、生活費の3〜6か月分の緊急資金を確保しましょう。これにより、収入減少や突然の出費があっても、返済を続けることが可能です。
➁保険の見直し
生命保険や医療保険を適切に見直し、万が一の事態で家族に返済負担がかからないよう備えましょう。病気やケガで働けなくなるリスクをカバーする保険も重要です。
③収入源の多様化
副業や投資など、収入源を複数持つことで、収入が途絶えた場合のリスクを分散できます。収入を一つに依存しないことが返済の安定につながります。
④繰り上げ返済の活用
余裕があるときに繰り上げ返済を行い、将来の利息負担を軽減しましょう。元本を早めに減らすことで、返済負担全体が減り、将来の経済変動にも柔軟に対応できます。
住宅ローンの種類と選び方
次に、住宅ローンの種類と選び方について見ていきます。
一般的に、住宅ローンには民間のローンと公的ローンの2つがあります。
民間ローンとフラット35の違い
民間ローンと公的ローンであるフラット35の特徴を、以下の表にまとめました。
項目 | 民間ローン | 公的ローン(フラット35) |
---|---|---|
金利タイプ | 固定金利、変動金利、またはその組み合わせ | 固定金利のみ |
返済期間 | 最長35年、金融機関によって異なる | 最長35年 |
借入条件 | 各金融機関の独自基準に基づく | 住宅の仕様や性能が基準を満たす必要がある |
手数料 | 金融機関によって異なる手数料が設定される | 申し込み手数料や事務手数料が発生する |
住宅性能 | 特に性能基準は設けられていない | 省エネ基準などの性能基準を満たす必要がある |
融資の利用目的 | 新築・購入・リフォームなど柔軟に利用可能 | 主に住宅の新築・購入・リフォームに利用 |
フラット35についてさらに詳しく知りたい方は、以下のサイトをご確認ください。
住宅ローン:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】 (flat35.com)
自己資金や収入に応じた住宅ローン選び
自己資金や収入に応じた住宅ローン選びは、返済負担を軽減し、家計を安定させるために非常に重要です。
まず、物件価格の20%程度を自己資金として準備することで、借入額を抑え、利息負担を軽減できます。自己資金が多ければ多いほど、借入額が少なくなり、毎月の返済額も低く抑えることが可能です。
また、借入額に対する返済比率も意識することが重要で、理想的には収入の25%以内に抑えることが望ましいとされています。返済比率が高くなると、家計に大きな負担がかかり、生活費や突発的な支出に対応できなくなる恐れがあるためです。
住宅ローン控除と税制優遇の活用
最後に、住宅ローン控除などの税制優遇制度について見ていきます。
住宅ローン控除を活用することで、家計にとってどのようなメリットがあるのかを中心にお伝えします。
住宅ローン控除の概要と適用条件
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅を新築・取得・増改築する場合に、毎年の住宅ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税から控除できる制度です。
住宅ローン控除を受けるためには、主に以下の8つの条件を満たす必要があります。
①住宅ローンの期間
住宅ローンの借入期間が10年以上であること。
➁借人の所得制限
借人の合計所得金額が2,000万円以内であること。
③自己居住用の住宅
控除対象となる住宅は、自己居住用である必要があります。
④住宅の取得・新築・増改築
控除の対象は、住宅を新築、取得、または増改築する際に借りた住宅ローンに限られます。
⑤適用年数
控除は最大13年間適用されますが、控除率や上限額は年ごとに異なる場合があるため、最新の情報を確認することが重要です。
⑥床面積
住宅の床面積が50㎡以上であること。
⑦入居期限
引渡しまたは工事完了から6ヵ月以内に入居していること。
⑧居住用割合
居住用の割合が1/2以上であること。
住宅ローン控除は、初年度に確定申告を行う必要があり、2年目以降は年末調整で控除を受けることができます。
住宅ローン控除の計算例
一例として、下記条件のもと、住宅ローン控除のシュミレーションを行ってみます。
シュミレーション条件
夫所得700万円
妻あり(扶養外)
生命保険料控除12万円
年末時点での住宅ローン残高2,500万円
課税所得の計算
所得700万円から基礎控除(48万円)と生命保険料控除(12万円)を引くと、課税所得は640万円となります。
課税所得=700万円−48万円−12万円=640万円
所得税の計算
課税所得640万円に対して、所得税率20%を適用し、控除額42万7,500円を引きます。これにより、所得税は85万2,500円となります。
所得税=640万円×20%−427,500円=852,500円
住宅ローン控除の計算
住宅ローン残高2,500万円に対して0.7%の控除を適用すると、住宅ローン控除額は17万5,000円になります。
住宅ローン控除額=25,000,000円×0.7%=175,000円
最終的な所得税
所得税から住宅ローン控除額を差し引くと、最終的な所得税は67万7,500円となります。
最終的な所得税=852,500円−175,000円=677,500円
あくまで一つの目安としてのシュミレーションです。
詳しくはファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみましょう。
住宅ローン控除を受けるために確定申告で必要な書類
住宅ローン控除を受けるためには、確定申告の際に以下8つの書類等を準備する必要があります。
①確定申告書
年間の所得、控除、税額を記入するための書類です。税務署から入手できますが、国税庁のウェブサイトから電子申告を利用することも可能です。
➁特定増改築等住宅借入金等特別控除額の計算明細書
住宅ローン控除の計算を行うための書類で、借入金の額、返済期間、年末時点の残高、控除率などを明記します。
③本人確認書類のコピー
運転免許証、パスポート、またはマイナンバーカードなどのコピーを提出します。
④住宅ローンの残高証明書
住宅ローンを借りている金融機関から発行される書類で、年末時点での残高を証明するものです。通常、年末に送付される年次報告書や専用の証明書が利用できます。
⑤建物・土地の登記事項証明書
住宅の登記情報を示す書類で、法務局から取得可能です。
⑥建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)のコピー
住宅の取得に際して締結した契約書のコピーです。新築の場合は請負契約書が必要です。
⑦居住証明書
自らがその住宅に居住していることを証明する書類で、通常は住民票が使用されます。
⑧所得証明書
年間の所得を証明するための書類です。勤務先から発行される源泉徴収票や、確定申告での収入額を記載した書類を提出します。自営業の場合は、事業収支報告書や青色申告決算書が必要になります。
まとめ
今回の記事のまとめです。
住宅ローンは長期にわたる返済が必要なため、返済計画や将来の生活設計をしっかりと見据えることが重要です。
結婚や出産、住宅購入、老後資金などのライフイベントを考慮し、返済シミュレーションを行いましょう。
また、返済負担を軽減するためには、緊急資金の確保や保険の見直し、収入源の多様化、繰り上げ返済の活用が大切です。
住宅ローンには「民間ローン」と「フラット35」があり、それぞれの特徴を理解して適切な選択をしましょう。
住宅ローン控除を活用することで、税負担の軽減も可能です。