雇用保険といえば、失業給付など、仕事を探すときや会社を辞めたときに利用する制度として広く知られています。
しかし、育児や介護のために休業する人を支援する給付制度があることを知らない方も多いのが実情です。
その中でも、育児休業給付金は、育児のために休業する人をサポートする制度です。
この記事では、育児休業給付金のメリットと効果的な活用法を解説したいと思います。
この記事で分かること
- 育児休業給付金の基礎知識
- 育児休業給付金と他の手当の違い
- 育児休業給付金を活用することのメリット
育児休業給付金の基礎知識
それではまず最初に、育児休業給付金の基礎的概要について見ていきます。
育児休業給付金は、育児中の経済的な支援を目的とした制度で、仕事と育児の両立をサポートします。
育児休業給付金とは?
育児休業給付金は、従業員が育児のために仕事を休み、賃金が減少した場合に国から支給されるサポート制度です。
育児休業給付金の特徴を以下にまとめます。
支給期間
育児休業は産後57日目から取得可能で、給付金の支給は子どもが1歳になる前日までが基本です。「1歳に達する日」とは誕生日の前日を指し、給付金の支給が終了するのはその前々日です。
給付額
育児休業開始から180日目までは、休業前の月額賃金の67%が支給されます。181日目以降は賃金の50%に減額されます。
育休延長の条件
通常、育児休業給付金の支給は1歳までですが、以下2つのケースでは支給期間を延長できます。
①パパ・ママ育休プラス
両親ともに育児休業を取得する場合、支給期間が1歳2ヵ月まで延長されます。
➁保育所に入れない場合など
保育所に入所できない、またはやむを得ない事情がある場合、育休の期間を最長で2歳まで延長することが可能です。
給付金を受け取るための条件とは?
育児休業給付金は、育児休業中に支給される制度ですが、必ず受けられるわけではなく、いくつかの条件があります。
以下にその5つの条件を挙げてみます。
①雇用保険への加入
育児休業給付金は雇用保険から支給されるため、雇用保険に加入していることが前提です。雇用形態は関係なく、パートやアルバイトでも雇用保険に加入していれば受給可能です。
➁被保険者期間
育児休業を開始する日前2年間に、被保険者期間が12ヶ月以上あることが必要です。なお、第一子の育児休業などの特別な理由がある場合は、要件を満たさない場合でも受給が可能となることがあります。
③賃金支払基礎日数
育児休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あることが条件です。
④給料の支払い条件
育児休業中、休業開始前の80%以上の給料が支払われていないことが求められます。もし80%に満たない場合でも、収入に応じて支給額が減額されることがあります。
⑤有期雇用労働者の追加要件
・契約社員やパートタイム・アルバイトなどの有期雇用労働者は、以下の追加条件を満たす必要があります。
・育児休業開始時において、同一の事業主の下で1年以上働いていること。
・子どもが1歳6ヶ月までの間に、労働契約が更新されないことが明らかでないこと。
育児休業中に他の収入(パートやアルバイトなど)がある場合、支給額が減額されることがあります。
育児休業給付金に関する参照サイト
・Q&A~育児休業給付~|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
支給される金額と支給期間について
育児休業給付金の支給金額と支給期間について、以下にポイントをまとめます。
支給金額
育児休業給付金の支給額は、育児休業開始前の給与に基づいて計算されます。
具体的には以下のようになります。
支給開始から180日目まで
育児休業開始前の賃金日額の67%が支給されます。
(上限: 最大305,721円)
181日目以降
育児休業開始前の賃金日額の50%が支給されます。
(上限: 最大228,150円)
支給期間
支給期間は、基本的には以下の条件に基づいています。
最長支給期間
育児休業を取得した日から子どもが1歳になるまでの期間、または特定の条件を満たす場合には、子どもが1歳6か月になるまで延長可能です。
育児休業給付金と他の手当の違い
では次に、育児休業給付金と他の手当の違いについて見ていきたいと思います。
また、他の手当や給付金と併用して活用するポイントについても詳しく見ていきます。
出産手当金との違い
育児休業給付金と出産手当金は、どちらも出産や育児に関連する支援金ですが、目的や支給対象期間は異なります。
出産手当金は、健康保険に加入している働く女性が、出産に伴って仕事を休む際に支給される手当です。
支給期間は、出産前の6週間と出産後の8週間で、その間の給与に代わり、標準報酬日額の約67%が支給されます。
出産手当金については以下の記事で簡潔にまとめています。
その他の育児関連制度と組み合わせる方法:パパ・ママ育休プラス
「パパ・ママ育休プラス」は、父親と母親の両方が育児休業を取得する場合に適用され、育児休業をより柔軟に取得できる制度です。この制度を利用することで、通常の育児休業期間を延長できるメリットがあります。
通常、育児休業は子どもが1歳になるまで取得できますが、両親がともに育児休業を取得した場合でも、基本的には子どもが1歳の誕生日までとなります。
しかし、「パパ・ママ育休プラス」を利用することで、次のような延長が可能です。
両親が育児休業を取得する場合
お互いが育児休業を取得することを条件に、子どもが1歳2カ月に達する日の前日まで育児休業を延長することができます。
育児休業給付金のメリットってどんなところ?
最後に、育児休業給付金のメリットについて確認していきましょう。
結局のところ、育児休業給付金を利用することで、妊婦やその家族にどのようなメリットがあるのでしょうか。
育児中の収入源としての活用
育児休業給付金は、育児中の収入源として非常に重要な役割を果たします。
育児休業中は通常の給与が支給されないため、育児休業給付金が経済的な支えとなります。
これは、言い換えれば、育児に専念できる時間を確保できるということです。
出産から育児に至るまでの時期は、不安やストレスを抱えやすいため、収入面でのサポートは経済的な助けだけでなく、精神的なサポートにもなります。
職場復帰のしやすさ
育児休業給付金を活用することは、職場復帰のしやすさにつながります。現代の多様な働き方の中で、特に女性が出産後に同じ職場で働き続けることは、自分らしい生き方を実現するために重要です。育児休業給付金や出産手当金などの社会保険は、そのつながりを支える役割を果たします。
一方で、留意すべき点も存在します。育児休業を予定より早く切り上げて職場復帰することも可能ですが、育児休業期間の途中で完全に職場復帰した場合、育児休業給付金の支給は復帰の前日までとなります。つまり、復帰日の前日分までが日割りで支給され、育児休業最終日の分は支給されません。
このように、育児休業給付金は職場復帰をサポートする重要な制度ですが、復帰のタイミングも考慮することが大切です。
育休後は職場復帰だけが選択肢ではありません。
出産を機に新たなライフプランを選ぶこともできます。
育休期間中に副業にチャレンジする人が増えているのもその一例です。
まとめ
今回の記事のまとめです。
育児休業給付金は、育児のために仕事を休む従業員を支援する制度で、育児休業中に賃金が減少した際に国から支給されます。
この給付金は、産後57日目以降に育児休業を取得した場合に支給され、基本的には子どもが1歳になる前日までが対象です。
給付額は、育児休業開始から180日目までは休業前の月額賃金の67%が支給され、181日目以降は50%に減額されます。
さらに、育児休業給付金には支給期間を延長できる条件もあります。両親が共に育児休業を取得する場合、「パパ・ママ育休プラス」によって支給期間が1歳2ヵ月まで延長されます。
また、保育所に入れないなどの特別な事情がある場合には、最長で子どもが2歳になるまで延長することが可能です。