『自身の退職金はいくら?』
退職金は、労働者にとって重要な報酬であり、会社への貢献を評価する手段の一つです。
その意義や仕組みはさまざまですが、退職金の受給額が将来の生活設計や経済的安定に大きな影響を与えるため、ライフプランニングと密接に関連しています。
本記事では、退職金制度の概要と、セカンドライフにおける退職金の活用方法について解説します。
この記事で分かること
- 退職金の仕組みや種類についての詳細
- 退職金の管理や運用に役立つ知識
退職金制度とは?
退職金制度は、退職する従業員に一定の金額を支給する制度です。
その本質は、従業員のモチベーション向上や企業の魅力向上、そしてこれまでの功績の労いなどが挙げられ、定年退職時に支給される退職金は、老後の資金等としての重要な役割を果たします。
ただし、全ての企業に退職金制度があるわけではなく、その内容は企業ごとに異なります。
退職金の金額は、一般的には勤続年数や役職などに基づいて決定されますが、具体的な基準は企業の退職金規程によって異なります。
退職金の主な種類(4種類)
では、具体的に、どのような種類の退職金があるのか見ていきましょう。
退職金制度には、大きく分けて以下の4種類があります。
・退職一時金制度
・中小企業退職金共済
・確定給付企業年金制度(DB)
・企業型確定拠出年金制度(DC)
退職一時金制度
退職金を退職時に全額一括で受け取る制度です。
退職一時金の額は、通常従業員の勤続年数や最終給与、定年までの残り勤務年数などに基づいて計算されます。
企業は従業員の退職金を積み立てるための予算を計上する必要があり、一般的には退職金共済組合や企業年金などを通じて行われます。
受け取った退職金には所得税と住民税が課税され、退職金所得控除の対象となるため、退職一時金は、一定の条件下で税制上の優遇措置を受けることができます。
中小企業退職金共済
社外積立型の公的退職金制度です。
中小企業における従業員の退職金の積立てや支払いをサポートする制度の1つであり、加入者は、月額5,000円〜3万円までの16種類から掛金を選び納付します。
退職する際には、これまでの掛金から算出する「基本退職金」と、運用利回りが予定を上回った場合の「付加退職金」を受け取ることができます。
退職金を一時金として一括で受け取る場合は退職金所得控除の対象となります。
年金で受け取る場合は雑所得の対象となる点に注意が必要です。
確定給付企業年金制度(DB)
企業と従業員が将来の年金給付額を決め、必要な掛金を積み立てていく制度です。
運用成果に関わらず、従業員は予め決められた額の年金給付を受け取ることができます。
確定給付企業年金制度は通称「DB(Defined Benefit Plan)」とも呼ばれます。
確定給付企業年金制度には「基金型」と「規約型」の2種類があります。
基金型は、別の法人格をもつ企業年金基金を設立し、年金資金の管理・運用・給付を行います。
規約型は、信託会社や生命保険会社などと契約し、管理・運営・年金給付を行います。
退職金は一時金として一括で受け取ることができ、その場合は退職金所得控除の対象となります。
年金のように一定額を一定期間にわたって定期的に受け取る場合は、公的年金等控除の対象となります。
企業型確定拠出年金制度(DC)
企業が掛金を拠出し、従業員が運用する制度です。
企業が積み立てる金額(拠出額)はあらかじめ確定されていますが、将来受け取る年金の額は、積立資産の運用結果に依存するため、年金受け取り額が変動するのが特徴です。
企業型確定拠出年金制度では、運用成績やリスクは従業員側が負担します。
企業型確定拠出年金制度は、「Defined Contribution Plan」から「DC」と呼ばれます。
確定拠出年金に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
退職金の相場っていくら?
退職金の額は、一般的に勤続年数や給与水準に影響されます。
厚生労働省と東京都産業労働局が公表した資料をもとに、大企業と中小企業それぞれの相場額を見ていきましょう。
次の図1のデータは、大企業に大学卒業後に勤めた場合の退職金の相場額です。
金属年数 | 自己都合退社 | 会社都合退社 |
3年(25歳) | 32万円 | 69万円 |
5年(28歳) | 59万円 | 118万円 |
10年(32歳) | 180万円 | 310万円 |
15年(37歳) | 387万円 | 578万円 |
20年(42歳) | 727万円 | 953万円 |
25年(48歳) | 1143万円 | 1349万円 |
30年(52歳) | 1707万円 | 1915万円 |
38年(60歳) | 2269万円 | 2528万円 |
厚生労働省の調査によると、大企業において10年間勤めた場合の退職金相場は、自己都合退職の場合が180万円、会社都合退職の場合は310万円となっています。
自己都合退職は、転職や病気・怪我、ライフステージの変化など、従業員自身の理由で退職することを指します。
次に図2のデータは、中小企業に大学卒業後に勤めた場合の退職金の相場額です。
金属年数 | 自己都合退社 | 会社都合退社 |
3年(25歳) | 24万円 | 34万円 |
5年(28歳) | 47万円 | 64万円 |
10年(32歳) | 112万円 | 150万円 |
15年(37歳) | 213万円 | 266万円 |
20年(42歳) | 343万円 | 415万円 |
25年(48歳) | 491万円 | 578万円 |
30年(52歳) | 654万円 | 754万円 |
定年退職 | 1092万円 |
出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」
中小企業に10年間勤めた場合の退職金相場は、自己都合退職の場合が112万円、会社都合退職の場合は150万円となっています。
中小企業の退職金は、大企業と比べて全体的に低めです。
これは両方の資料に共通する点ですが、会社都合退職の場合、退職金の相場が高くなる傾向があります。
自社の退職金を調べる方法
自身の会社の退職金制度については、就業規則や賃金規程などを確認するのが、一般的です。
退職金が支給される対象者や金額の算出方法、支給日、自社がどの制度を採用しているかなどがなどが記載されているため、自身がどのくらいの金額を受け取れるかの指標になります。
ただし、退職金制度がない場合や、関連する規定が記載されていない場合があります。
そのような場合は、自社の人事労務担当者に直接問い合わせるのが最適です。
自身が退職金の積み立てを負担しているかどうかを確認したい場合は、給与明細をチェックしましょう。
負担している場合は、「企業年金掛金」「退職金掛金」「確定給付掛金」などの項目に、控除された金額が記載されています。
就業規則や賃金規程には、時には複雑な記載があることがあります。
そのような場合、会社の人事労務担当者に直接問い合わせるとスムーズです。
退職金の受け取り方:一時金 or 年金
退職金の受け取り方法には、一時金と年金の2つの選択肢があります。
具体的には、以下のようになります。
制度名 | 受け取り方法 |
---|---|
退職一時金制度 | 一時金 |
確定給付企業年金制度 | 一時金 または 年金 |
企業型確定拠出年金制度 | 一時金 または 年金 |
中小企業退職金共済 | 一時金 または 年金 |
受け取り方法の選択は、個々の状況やニーズによって異なります。
例えば、退職のタイミングで大きな出費を計画している場合、一時金の方が適していますが、
退職金を多く受け取りたい場合は、年金として受け取る方が金額が増える可能性があります。
また、一時金と年金を併用して受け取ることもできます。
これにより、退職後の生活費として活用しつつ、余剰分を運用できるメリットがあります。
受給額を明確にしたい場合は、FPに相談するのもおすすめです。
退職金の有効な活用方法とは?
退職金を確保することは、将来の不測の事態に備えるためだけでなく、自身にとってのファイナンシャルプランをより良くするためにも必要です。
セカンドライフにおける退職金の活用方法には、主に次の3つがあります。
①老後の生活資金に充てる
定年退職後は、公的年金などの収入だけでは生活が厳しくなることがあります。退職金を老後の生活資金に充てることで、経済的安心感を得ることができます。老後に備え、病気や介護、葬儀などの経費も考慮して、必要な額を計画しておくことが重要です。
➁セカンドライフで夢を叶えるための資金にする
退職後の時間を有意義に過ごすために、退職金を使って夢を叶えることもできます。自宅のリフォームや趣味の道具購入、海外旅行など、これまで叶えられなかったことに挑戦することができます。
③退職金を運用して増やす
退職金を運用して増やすことで、老後の生活費に備えることもできます。定期預金やNISA、iDeCoを活用したり、投資信託や株式投資を行ったりすることが考えられます。ただし、積極的な運用は避け、経済的負担とならないような運用が求められます。
退職金の活用方法はライフプランに応じて異なります。
ライフプラン表を作成することで、将来の計画がより明確になります。
まとめ
退職金は労働者にとって重要な給付のひとつですが、その受け取り方や活用方法については慎重な計画が必要です。
退職金には一時金と年金という選択肢があり、また老後の生活資金や将来の目標にどう充てるかなど、さまざまな活用方法が考えられます。
そのため、退職金を最大限に活用するには、自身のライフスタイルに合った計画を立てることが重要です。
各選択肢を十分に理解し、賢明な意思決定を行うことが、充実した退職生活を送るための第一歩となります。