『年金って65歳か受け取れるけど、繰り上げて受給すると?』
年金は原則として65歳から受け取ることができますが、繰り上げて受給することも可能です。
繰り上げ受給を選択すると、受給開始年齢を早めることができるため、早い段階で生活資金を確保することができます。
しかし、その分年金額が減少するため、メリットとデメリットをよく理解しておく必要があります。
この記事では、年金受給の基本や繰り上げ受給の詳細、注意すべきポイントについて解説します。
この記事で分かること
- 年金受給の基本知識
- 繰り上げ受給の注意点
- 繰り上げ受給を決める前に考慮すべきこと
年金受給の基本知識
年金受給の基本知識について見ていきましょう。
一般的に、年金とは一定の条件を満たした後に、老後の生活資金やその他の支援を受け取ることができる制度です。
日本では、主に公的年金制度があり、これには国民年金と厚生年金の2つがあります。
まずは一緒に、年金制度の仕組みについて学んでいきましょう。
年金の役割
年金の役割は、主に以下の3つの観点から考えることができます。
①老後の生活資金の確保
年金は、老後の生活資金を提供する重要な制度です。高齢になり働けなくなった際に年金によって収入を得ることができ、生活の質を維持するのに役立ちます。
➁社会保障制度の一環
年金は国の社会保障制度の一部として位置づけられています。これにより、老後だけでなく、障害や死亡といったリスクに対しても一定の保障を提供することができます。たとえば、働けなくなった場合の障害年金や、亡くなった際の遺族年金などがあります。
③資産形成と再分配
年金制度は、個人の資産形成に寄与するだけでなく、社会全体での資源の再分配を促進します。若い世代が働いている間に支払った保険料が、年齢を重ねた世代に分配されることで、全体的な経済の安定性を高めます。
年金の種類
日本の年金制度には、以下の3つの種類があります。
①国民年金
自営業やフリーランスなど、厚生年金に加入していない人が対象です。20歳以上60歳未満の全ての国民には加入義務があります。
➁厚生年金
企業に勤めるサラリーマンや公務員が加入する年金で、雇用主が保険料を負担します。そのため、将来受け取る年金額は国民年金よりも高くなる傾向があります。
③私的年金
企業が独自に設ける年金制度や、個人が積み立てる年金で、年金の受給額を補完する役割を果たします。具体的には、確定拠出年金(iDeCo)や確定給付企業年金(DB)などがあります。
繰り上げ受給とは?
次に、年金を繰り上げ受給について見ていきましょう。
年金は原則として65歳から受け取れる制度ですが、繰り上げて受給することも可能です。
繰り上げ受給の仕組み
年金の受給開始時期については、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、年金は原則として65歳から受け取ることができますが、60歳から繰り上げ受給を選択することも可能です。
この場合、受給開始を早めるため、年金額は毎月約0.4%減少します。
逆に、受給を65歳以降に遅らせる繰り下げ受給もあり、最大で70歳まで遅らせることができます。
この場合、年金額は毎月約0.7%増加します。
なお、年金を受け取るためには、所定の手続きを行う必要があります。
受給の申請は受給開始の3か月前から可能です。
繰り上げ受給の減額率は、2024年8月時点のものです。
今後の法改正により、減額率が変更される可能性があるため、定期的に確認することが重要です。
繰り上げ受給のメリット
繰り上げ受給の主なメリットを、以下に4つ挙げてみます。
1. 早期の資金確保
繰り上げ受給をすることで、早い段階から年金を受け取れるため、必要な資金を早期に確保できます。特に、退職後すぐに生活資金が必要な場合に有効です。
2. 資金の流動性向上
繰り上げ受給により、生活費や医療費、急な出費などに対する資金が得やすくなり、経済的な余裕を持ちやすくなります。
3. 短期的な必要性への対応
例えば、早期に退職した場合や、収入が減少した場合に、繰り上げ受給を利用することで、必要な資金を手に入れることができます。
4. 長期間にわたる受給
年金の受給額は、繰り上げ受給をすると減少しますが、受給開始年齢が早い分、長期間にわたって受け取ることができます。早期に必要な資金が得られれば、その分のリスクを軽減できます。
繰り上げ受給のデメリット
繰り上げ受給にはいくつかのデメリットがあります。
主なものを以下に4つ挙げます。
1. 受給額の減少
繰り上げ受給をすると、年金の受給額が減少します。これは、受給開始年齢が早くなるため、受給期間が長くなることを考慮して設定されています。長期間受け取るためには、毎月の受給額が少なくなることを理解しておく必要があります。
2. 生活資金の不足リスク
繰り上げ受給を選択すると、将来的に必要な生活資金が不足する可能性があります。特に、老後の資金計画が不十分な場合、長期間にわたって減額された年金を受け取ることは、後々の生活に影響を及ぼすことがあります。
3. 健康状態や生活環境の変化に対するリスク
早期に年金を受け取り始めることで、生活環境や健康状態が変わった場合に対応できる余地が少なくなることがあります。例えば、突然の医療費が発生した際に、減額された年金では対応しきれない可能性があります。
4. 年金の見直しが難しくなる
繰り上げ受給を選んだ場合、受給額が固定されるため、将来の年金制度の改正や経済状況の変化による影響を受けにくくなります。これにより、必要に応じて年金の見直しや再評価が難しくなることがあります。
繰り上げ受給の注意点
繰り上げ受給の注意点について知っておきましょう。
先ほどデメリットとして受給額が減少することをお伝えしましたが、その減少がライフプランにどのように影響するかを解説します。
繰り上げ受給による年金額の減少
繰り上げ受給による受給額の減少は、退職後の基本的な生活費を維持する上で大きな影響を及ぼす可能性があります。
年齢が上がるにつれて医療費の増加も考慮しなければなりません。
高齢者にとって医療費は重要な要素であり、余裕を持った資金計画が必要です。
さらに、趣味や旅行といった娯楽費も生活の質を保つために重要です。
受給額が限られていると、こうした楽しみを満喫することが難しくなる可能性があります。
加えて、事故や病気といった予期しない支出に備えることも欠かせませんが、受給額の減少がこれらの支出に対する対応を難しくする恐れがあります。
万が一の際に備えて、就業不能保険や所得補償保険などを検討することは、有効なリスクヘッジとなります。
繰り上げ受給を決める前に考慮すべきこと
最後に、繰り上げ受給を決める前に考慮すべきことについて見ていきましょう。
結局のところ、繰り上げ受給は行った方がいいのか、それとも行わない方がいいのか、その際のポイントについてお伝えします。
繰り上げ受給の選択肢と条件
繰り上げ受給を検討する際の条件を以下に挙げます。
①早期の生活資金が必要な場合
退職後すぐに生活費が必要な場合、繰り上げ受給を利用することで早期に年金を受け取ることができます。特に他に収入源がない場合や貯蓄が少ないときに効果的です。
➁健康上の理由
健康に不安がある場合、早めに受給を始めることで、通常よりも早く年金を受け取ることが可能です。
③退職後の活動が少ない場合
退職後に働く意欲が低い、または体力的に働けない場合には、年金を早く受け取ることで生活資金を確保できます
繰り上げ受給を選ぶ際は、受給額の減少がライフプランに与える影響を理解することが大切です。
退職後の生活費や医療費、趣味にかかる支出を考慮し、将来の資金計画を立てる必要があります。
まとめ
今回の記事のまとめです。
年金は原則65歳から受け取れますが、60歳からの繰り上げ受給も可能です。
この場合、受給額は毎月約0.4%減少します。
一方、65歳以降に受給を遅らせる繰り下げ受給では、受給額が毎月約0.7%増加します。
繰り上げ受給のメリットには、退職後すぐに生活資金を確保できること、急な出費に対応しやすくなること、そして長期間にわたって受け取れることがあります。
しかし、デメリットとしては、受給額の減少によって将来的に生活資金が不足するリスクや、健康状態の変化に対する対応が難しくなることが考えられます。
繰り上げ受給を選択する際は、ライフプランへの影響を十分に理解し、将来の資金計画を慎重に立てることが重要です。