『年金受給額だけでは生活が苦しい——』
これは筆者の祖母がよく口にする言葉です。
高齢化が進む現代社会において、高齢者の可処分所得はますます重要なテーマとなっています。
可処分所得とは、税金や社会保険料を引いた後に手元に残る「自由に使えるお金」を指し、高齢者の生活の質や経済的安定に大きな影響を与えます。
本記事では、公的年金が高齢者の可処分所得にどのように関与しているかを詳しく考察し、高齢者が可処分所得を増やすための具体的な方法についても解説します。
この記事で分かること
- 高齢者にとっての可処分所得の役割
- 公的年金が可処分所得に与える影響
- 高齢者が可処分所得を増やすための対策
高齢者にとっての可処分所得の役割
それではまず最初に、高齢者にとっての可処分所得の役割について見ていきます。
同じ可処分所得でも具体的に、高齢者と若年層ではどの点が異なるのかに焦点を当てます。
可処分所得の増加がもたらす生活の質の向上
高齢者が可処分所得を増やすことのメリットには、以下の3つの要因があります。
①経済的安定の確保
可処分所得が増えることで、必要な生活費や医療費、介護サービスの支出を捻出できるようになり、将来の医療費や介護費用、予期せぬ支出にも備えることができます。
➁健康管理の向上
経済的余裕が生まれることで、質の高い医療サービスや健康維持のためのサポートを受けやすくなります。定期的な健康診断や治療を継続できるようになり、健康状態の維持・改善が期待できます。
③趣味・娯楽への投資
可処分所得が増えることで、趣味や娯楽活動に参加しやすくなり、地域のイベントやボランティア活動にも積極的に参加できるようになります。これにより、社会的なつながりが強化され、セカンドライフがより充実しやすくなります。
可処分所得については、以下の記事で詳しく解説しています。
公的年金の基礎知識
次に、公的年金の基礎知識について見ていきます。
一般的に、高齢者の生活における主な収入源は公的年金であるため、その概要をこの章で把握しておきましょう。
公的年金の仕組み
公的年金は、国が運営する年金制度で、主に国民年金(基礎年金)と厚生年金の2つから成り立っています。
国民年金は、すべての国民が加入する基本的な制度で、20歳以上60歳未満の人に加入義務があります。
一方、厚生年金は会社員や公務員を対象としており、国民年金に追加される形で支給されます。厚生年金では、企業と従業員が共同で保険料を支払い、その賃金に基づいて年金額が計算されます。
公的年金の受給資格は、最低限の保険料を納付した場合に生じ、通常は65歳から支給されます。また、早期受給(60歳から)や繰り下げ受給(70歳まで)も可能で、受給開始年齢によって年金額が変動します。
保険の三階建て部分には私的年金があります。
私的年金については、以下の記事で詳しくまとめています。
公的年金が可処分所得に与える影響
では、ここからは公的年金が可処分所得に与える影響について見ていきましょう。
先ほど解説した公的年金と可処分所得の関係を基に、高齢者にとってどのような影響があるのかを具体的に考察していきます。
年金受給額と可処分所得の関係
年金受給額と可処分所得は、特に高齢者にとって密接な関係があります。
年金が主要な収入源となる場合が多い中で、年金受給額は高齢者の生活基盤となるため、年金から差し引かれる税金や社会保険料の負担が可処分所得を左右します。
具体的には、以下のような影響があります。
税金・社会保険料の影響
年金受給額が一定額以上になると、所得税や住民税がかかり、さらに介護保険料や後期高齢者医療制度の保険料も天引きされます。このため、年金として受け取る額が多くても、実際に手元に残る可処分所得は、これらの負担分を差し引いたものとなります。
年金受給額の増加と負担の変動
年金受給額が増加すれば、当然受け取れる金額も増えるのですが、同時に税金や保険料の負担も増える可能性が高まります。このため、受給額が高くても、可処分所得があまり増えない場合もあります。
住民税の非課税基準
年金受給者には一定の非課税基準が適用される場合もあります。この基準以下の年金受給額であれば、住民税や介護保険料の負担が減るため、可処分所得が高くなります。
高齢者が可処分所得を増やすための対策
では最後に、高齢者が可処分所得を増やすための具体的な方法について見ていきましょう。
どのような対策があるのか、一つずつ確認していきます。
生活費の見直し
高齢者が可処分所得を増やすためには、まず「生活費の見直し」が有効な対策の一つです。
日々の支出を効率化することで、手元に残るお金を増やし、結果的に可処分所得を高めることができます。
具体的には、以下の3つのポイントが効果的です。
①固定費の削減
固定費は毎月必ずかかる支出のため、見直しによって長期的な節約効果が期待できます。たとえば、携帯電話のプランの見直しや電力会社の変更を検討することで、毎月の支出を減らすことが可能です。
➁食費や日用品の工夫
高齢者向けの割引を活用したり、まとめ買いや特売日を利用するなど、食費の節約方法を工夫することで、日々の支出を抑えることができます。また、家庭菜園を始めて自家消費できる食材を増やすのも一つの方法です。
③住居費の見直し
住まいが広すぎる場合や住宅ローンの負担が大きい場合には、住居費の見直しが効果的です。たとえば、よりコンパクトな住まいに引っ越して賃料を下げたり、固定資産税などの負担を減らすことができます。また、住宅ローンの借り換えやリバースモーゲージの活用も、住居費の軽減につながる場合があります。
セカンドライフには様々な選択肢があります。
その中の一つに海外移住があります。
海外移住については、以下の記事で詳しく解説しています。
保険の見直し
高齢者が可処分所得を増やすには、「保険の見直し」も有効です。
保険は固定費として長期間支払うため、内容を見直すことで支出を抑え、手元に残るお金を増やせます。
保険の見直しの3つのポイントは以下の通りです。
①保険の整理
高齢者の多くは医療保険や生命保険に加入していますが、現状に合わせて保障内容を見直すことで、不要な保険料を削減できます。独立した子どもがいる場合や保障が過剰な場合、保障額を減らしたり解約するのも有効です。
➁医療保険の適切な見直し
医療保険は重要ですが、すでに公的医療保険で保障される部分もあるため、重複する保障や利用頻度が低い特約を外すことで、保険料を抑えられます。
③介護保険の検討
将来の介護に備えるため、民間の介護保険も検討できますが、公的介護保険で十分かどうかも考慮し、費用対効果を見極めることが大切です。
保険は一度加入すると放置しがちですが、定期的に見直すことで内容や月々の支払い負担を最適化できます。
公的支援や補助金の活用
高齢者が可処分所得を増やす方法に、公的支援や補助金の活用が挙げられます。これらの公的支援を利用することで、生活費を軽減し、手元に残る資金を増やすことができます。
具体的な活用方法は以下の通りです。
①年金以外の公的支援の確認
高齢者には、生活支援や医療、介護に関するさまざまな公的支援が用意されています。たとえば、低所得者向けの生活保護や医療費の一部助成制度があります。
➁補助金の活用
各自治体では、高齢者向けの補助金や助成金が用意されています。具体的には、介護サービスを利用する際の補助金や、住宅のバリアフリー改修に対する助成金などがあります。
③税制上の優遇措置
高齢者には、税金の減免や優遇措置が適用されることがあります。たとえば、住民税の非課税措置や医療費控除などです。
公的支援や補助金はすべての人に適用されるわけではありませんが、まずは自身が対象者に該当するかどうかを確認し、相談してみることが大切です。
まとめ
今回の記事のまとめです。
高齢者にとって、年金受給額は生活基盤を支える重要な要素です。
そのため、年金から差し引かれる税金や社会保険料の負担が可処分所得に大きな影響を与えます。
可処分所得を増やすことには、経済的安定の確保、健康管理の向上、趣味や娯楽への投資といったメリットがあります。
可処分所得を増やすためには、生活費や保険の見直し、公的支援や補助金の活用が有効です。