筆者は7年前に資産運用を開始しましたが、当初はポートフォリオ戦略の意味やその重要性を理解していませんでした。
しかし、現在ではその重要性を強く認識しています。
理想的な資産運用と資産管理は、財務の安定性や将来の目標達成に向けた重要な要素です。適切なポートフォリオ戦略を構築し、リスク管理とリターンのバランスを保つことで、これらの目標を実現する手段となります。
そこで今回は、ポートフォリオ戦略とその基本的な構築方法について解説したいと思います。
この記事で分かること
- ポートフォリオ戦略の基本的な特徴とそのメリット
- バランスの取れたポートフォリオ構築の方法
ポートフォリオとは
ポートフォリオとは、保有資産の割合を種類ごとに表す「保有資産の構成」を指し、また投資家が複数の金融商品を組み合わせたものを意味します。
投資を始める際には、自身に適したポートフォリオを作成することが不可欠です。
リスクを分散しリターンを最大化するためには、異なる資産クラスを組み合わせることが重要です。これにより、特定の資産クラスで発生する損失を抑えることが可能になります。また、複数の資産クラスを組み合わせることで、相乗効果によってリターンを向上させることも期待できます。
適切に分散させたポートフォリオを保有することで、リスクを抑えつつ安定的なリターンを得ることができます。
図1:ポートフォリオ内訳例
ポートフォリオの持つ重要性とそのメリット
ポートフォリオは、資産運用において極めて重要な役割を果たします。適切に構築・管理することで、リスクを分散し、同時にリターンを最大化することが可能です。
まず、リスクの分散によって特定の資産クラスの損失を軽減することができます。例えば、特定企業の株式に対する損失を、相関関係が低い不動産の値上がりでカバーすることができます。
次に、リターンの最大化に貢献します。異なる資産クラスを組み合わせることで、相乗効果により、リターンを向上させることができます。株式の値上がりや不動産の賃料収入など、さまざまな要素が総合的にポートフォリオのリターンに寄与します。
そして、投資の効率化も大きなメリットです。複数の資産クラスを組み合わせることで、投資資金を増やすことができ、複利効果により資産を効果的に増やすことが可能です。例えば、株式の値上がりと債券の利息収入を組み合わせることで、投資資金の増加を促進することができます。
ポートフォリオの構成内容
ポートフォリオの構成要素には、主に以下の4つが含まれます。
1.株式
・配当や株価上昇によるリターンが期待できるが、値動きが大きくリスクも高い。
・株価の急落による資産価値の減少もある。
2.債券
・企業や国が発行する借用証書であり、元本と利息の支払いが約束されている。
・株式よりリスクは低いが、リターンも低い。
3.不動産
・土地や建物などの不動産資産であり、賃料収入や売却益によるリターンが期待できる。
・初期費用が大きく、売却には時間がかかるため流動性が低い。
4.現預金
・お金そのものであり、最も流動性が高いが、リターンはほとんど期待できない。
・現在では急激なインフレにより価値が下がる傾向がある。
これらの資産クラスは、国内と海外、先進国と途上国などに分けられることもあります。
主として組み入れられる要素は上記の4つですが、さらにこれら以外にもいくつかあります。
①コモディティ
・金や原油などの自然資源や物資を指す。
・インフレヘッジやポートフォリオの多様化のために組み込まれることがある。
➁為替
・異なる通貨間価値の相対的な変動に基づく取引や投資を指す。
・外国為替市場での通貨売買や、外国の金融資産の保有を通じて行われ、通貨の価値変動によって利益を得る。
③オルタナティブ投資
・株式や債券とは異なる資産クラスに分類される投資。
・ヘッジファンド、不動産投資信託(REITs)、私募ファンドなどが含まれる。
④投資信託
・複数の資産(株式、債券、不動産など)を一つのポートフォリオにまとめたものであり、個々の投資家が取引可能な形態で提供される。
どの商品を選ぶかよりも、どのようにリスクヘッジをするかを考えることが大切ですね。
不動産投資や新NISAなどのポートフォリオ構築については、以下の記事でそれぞれまとめています。
ポートフォリオの作り方
この章では、ポートフォリオの作り方について見ていきましょう。
まず、前提として、運用目的と運用期間は密接に関連しています。
老後資金の準備と子供の教育資金を目的とした運用では、投資期間が異なります。投資期間が長い場合はリスクを取ってリターンを追求することも検討できますが、投資期間が短い場合は安定的なリターンを重視したポートフォリオを構築する必要があります。
運用目的と運用期間を明確にすることで、適切なポートフォリオを構築することができます。
運用目的の明確化
ポートフォリオを作る際には、まず運用目的を明確にすることが重要です。
運用目的を明確にすることで、投資家は自身の目標やリスク許容度に合ったポートフォリオ構築の方針を確立することができます。
運用目的には以下の4つの項目が挙げられます。
- 資産形成
将来の目標達成のために、資産を増やすことが目的です。資産形成の運用期間は様々ですが、リスクを取りながらリターンを最大化することが重要です。 - リタイアメント
退職後の生活や収入源を確保するために資産を運用します。一般的には年金や退職金などと組み合わせた資産形成を目指します。 - リスクヘッジ
市場の変動に対するリスクを軽減することが目的です。現金だけで資産を形成するよりも、金や債券などの資産を保有することで、自身の資産減少リスクへの備えができます。 - インカムゲイン
定期的な収入を確保するためにポートフォリオを構築します。配当金や利息などの収入源を重視し、収益を安定させることが重要です。
運用期間の策定
運用期間の策定は、ポートフォリオを構築する上で非常に重要な要素です。
運用期間が短い場合、市場の急激な変動によって損失を被るリスクが高まります。そのため、リスクを抑えたポートフォリオを構築することが必要です。具体的には、株式の割合を減らし、債券の割合を増やしたり、投資信託やETFなどの分散投資商品を活用することが重要です。
一方、運用期間が長い場合は、リスクを取ってリターンを追求するポートフォリオを構築することも検討できます。長期的な投資期間では、市場の短期的な変動の影響を受けにくくなるため、株式の割合を増やしたり、個別銘柄への投資を検討することができます。
おさえておきたいポイント:リバランス(割合補正)
ポートフォリオを効果的に管理するためには、定期的なリバランス(割合補正)が必要です。
ポートフォリオは資産価値に基づいて構築されますが、その後の市場の変動によって各資産の割合が変化してしまいます。このため、定期的にポートフォリオの割合を調整し、理想的なバランスを保つことが重要です。
リバランスの頻度には決まりはありませんが、最低でも年に1回は行うことが推奨されています。これにより、現在の資産状況を把握し、目標に向けて調整することができます。
さらに、経済全体や市場に大きな影響を与える出来事があった場合や、保有している資産に重大な変動があった場合は、必要に応じてリバランスを行うことが重要です。これにより、ポートフォリオのリスクを最小限に抑え、投資目標に向かって効果的に進むことができます。
まとめ:ポートフォリオ戦略
ポートフォリオを形成する際には、商品の選択だけでなく、リスクヘッジの方法も非常に重要です。リスクヘッジは、投資家がリスクを管理し、ポートフォリオ全体の安定性を確保するための戦略であり、異なる資産クラスや投資商品を組み合わせることで、特定のリスクに対する保護を提供することができます。
例えば、株式のリスクをヘッジするために債券を組み入れる、または不動産やコモディティを加えることでポートフォリオの多様化を図るなど、リスクヘッジの方法は様々です。
また、ポートフォリオ戦略を策定する際には、運用目的と運用期間を明確にすることが大切です。これにより、投資家は自身の目標やリスク許容度に合ったポートフォリオ戦略を確立することができます。そして、それらを持続可能にするために、定期的なリバランス(割合補正)を活用しましょう。