『シニア世代を扶養に入れるメリットとは?』
シニア世代を扶養に入れると、税制面での効果が大きく、適切に活用すれば所得税や住民税の負担を軽減できます。
ただし、扶養に入れるためにはいくつかの条件や手続きが必要です。
特に、シニア世代(65歳以上)を扶養に組み込む場合、適用される年齢や扶養者の所得に関する知識が求められます。
この記事では、シニア世代を扶養に入れることで得られる税制面のメリットに加え、扶養控除に関するQ&Aも解説します。
この記事で分かること
- シニア世代を扶養に入れるメリット
- シニア世代を扶養に入れる際の注意点
- 扶養控除に関するQ&A
扶養控除を活用して税金を軽減する方法
それではまず、シニア世代を扶養に入れるメリットについて見ていきましょう。
扶養控除には対象範囲などの条件がありますが、シニア世代を扶養に入れることで得られる具体的なメリットについて解説します。
シニア世代を扶養に入れるメリットとは?
シニア世代を扶養に入れるメリットには、主に税制面での優遇があります。
その具体的なメリットを以下にまとめます。
1. 扶養控除による税金の軽減
シニア世代(65歳以上)を扶養に入れると、「扶養控除」を受けることができ、所得税や住民税が軽減されます。特に、70歳以上のシニアを扶養に入れることで、「老人扶養控除」が適用され、一般的な扶養控除よりも控除額が増えます。
2. 社会保険料の負担軽減
シニア世代を扶養に入れることで、健康保険や年金の負担が軽減される場合があります。例えば、70歳以上の親族が健康保険の被扶養者となると、その親族は保険料の支払いが不要になり、医療費の自己負担割合が減少することがあります。
3. 生活支援や支援制度の利用
シニア世代を扶養に入れることで、福祉制度や生活支援制度の利用資格が得られる場合があります。例えば、介護保険や高齢者向けの支援金制度など、税制面だけでなく生活面でもサポートを受けやすくなります。
4. 家族の経済的安定
シニア世代の収入が少ない場合、扶養に入れることで所得税や住民税の負担が軽減され、家計の負担が減少します。その結果、扶養者自身の生活水準を維持しやすくなります。
シニア世代の扶養で得られる所得控除とは
シニア世代(65歳以上)を扶養に入れることで受けられる所得控除は、主に以下の5つです。
これらが適用されることで、所得税や住民税の負担を軽減できます。
1. 扶養控除(老人扶養控除)
扶養している家族がいる場合に適用される所得控除です。特にシニア世代(70歳以上)を扶養に入れると「老人扶養親族」として扱われ、通常の扶養控除よりも控除額が増えます。
2. 配偶者控除
65歳以上のシニア世代の配偶者がいる場合、その配偶者の年間合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)であれば「配偶者控除」が適用されます。ただし、配偶者控除と扶養控除は同一の配偶者に対して併用できません。
3. 医療費控除(特別支援)
シニア世代を扶養に入れている場合、高齢に伴い医療費がかさむことがあります。年間の医療費が一定額(通常は総所得金額等の5%または10万円のいずれか少ない方)を超えた場合、その超過分を医療費控除として申請することで、所得税や住民税を軽減できます。
4. 社会保険料控除
扶養しているシニア世代が支払った社会保険料(例:健康保険料、国民年金保険料)を社会保険料控除として申告できます。これにより、所得から保険料相当額が差し引かれ、税負担が軽減されます。
5. 介護保険料控除
シニア世代を扶養している場合、特に要介護認定を受けた高齢者にかかる介護費用が増えることがあります。扶養者がシニア世代の介護保険料を支払っている場合、その支払い金額を社会保険料控除の一部として申請できます。
2つ目の項目にあるように、併用ができない控除もあります。
配偶者控除の詳細については、以下の記事でまとめています。
シニア世代を扶養に入れる際の注意点と要件
次に、シニア世代を扶養に入れる際の注意点を見ていきます。
先に述べたように、併用できない控除もあるため、その条件について詳しく確認していきましょう。
シニア世代を扶養に入れる際の注意点と要件
シニア世代を扶養に入れる際の注意点について、以下の点を確認しておくことが重要です。
1. 所得制限と扶養控除の適用条件
シニア世代(65歳以上)の扶養控除を受けるためには、扶養される方の年間所得が一定額以下であることが必要です。
扶養されるシニアの年間所得上限額
Ⓐ所得制限
・扶養されるシニア世代の年間所得が48万円以下であることが条件(令和元年分以前は38万円以下)。
Ⓑ給与所得がある場合
・シニア世代が給与所得者の場合、給与収入が103万円以下でなければ扶養控除の対象外。
2. 併用できない控除
シニア世代を扶養に入れる場合、配偶者控除と扶養控除は同一の配偶者に対して併用できません。配偶者控除を受けるためには、配偶者の年収が一定額(通常は103万円以下)である必要があり、その場合、扶養控除とは併用できません。
3. 扶養親族としての要件
シニア世代が扶養親族として認められるためには、納税者と「生計を一にしている」ことが必要です。つまり、シニア世代が独立して生活しておらず、納税者と共同で生活費を負担している状態でなければなりません。もし別居している場合でも、生活費の支援をしていることが証明できれば扶養親族として認められます。
4. 青色申告者の事業専従者について
シニア世代が青色申告者の事業専従者として働いている場合、その年に一度も給与を受け取っていないことが要件です。もし給与を受け取っている場合、扶養控除の対象外となる場合があります。また、白色申告者の事業専従者であっても同様の扱いになります。
よくある質問|扶養控除に関するQ&A
最後に、扶養控除に関するよくある悩みについて見ていきましょう。
再三お話ししてきたように、扶養控除には適用条件が定められています。
ここでは、実際によくある質問を通じて、扶養控除の疑問を解消しておきましょう。
扶養控除と医療費控除の併用で気を付けることとは?
扶養控除と医療費控除を併用する際には、以下の3点に注意が必要です。
1. 申告対象となる扶養親族の医療費
医療費控除の対象となるのは、納税者本人やその扶養親族が支払った医療費であり、対象外となる費用もあるため、控除を受ける前に何が対象となるかをしっかりと確認することが重要です。
2. 医療費控除に必要な証明書
扶養控除を受けているシニア世代や扶養親族の医療費は、医療費控除の申告に含めることができます。しかし、医療費控除を受ける場合には、扶養親族が実際に支払った医療費が対象となるため、領収書など、支払いを証明できる書類など、その金額が明確であることを証明する必要があります。
3. 確定申告を行う必要がある場合
医療費控除は確定申告を通じて申請することが一般的ですが、年末調整では申告できません。扶養控除と医療費控除を両方適用する場合、確定申告を通じて申請することが必要です。
扶養控除の対象となる親族はどこまで?
扶養控除の対象となる親族は、以下の条件を満たす者です。
・納税者の配偶者(内縁関係の人は除く)
・子ども(実子、養子、または養子縁組をしている孫など)
・父母(実親、養親、義父母)
・祖父母(親の両親、義両親)
・兄弟姉妹(納税者と血縁関係のある兄弟姉妹やその子ども)
・その他の親族(直系血族、兄弟姉妹の子など)
扶養控除の適用範囲については、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
今回の記事のまとめです。
シニア世代を扶養に入れることで、税制面や社会保険面でのメリットがあります。
特に70歳以上のシニアを扶養に入れる場合、「老人扶養控除」が適用され、通常の扶養控除よりも控除額が増えるため、税負担が軽減されます。
ただし、扶養されるシニアの年間所得には制限があり、また、配偶者控除と扶養控除は併用できません。
扶養控除を適用する際は、これらの条件を確認し、適切に申告することが重要です。