パートやアルバイトとして働く際に、よく耳にする「106万円の壁」と「130万円の壁」。
これらの年収ラインは、税金や社会保険の負担に大きな影響を与えるため、特に主婦や学生、シニア層など、扶養範囲内で働いている方々にとって重要なポイントです。
しかし、具体的にどのような影響があるのか、どう対策すべきなのかを理解している方は意外に少ないのが実情です。
この記事では、106万円と130万円の壁についてわかりやすく解説し、それぞれの年収ラインをどう活用すれば効果的に収入を最大化できるのか、またどんな対策を講じれば可処分所得を増やせるのかをご紹介します。
この記事で分かること
- 106万円の壁と130万円の壁の概要
- 年収の壁を効果的に活用するための戦略
106万円の壁とは?その仕組みを解説
一般的に「年収の壁」といえば103万円が思い浮かびますが、実は103万円以外にも年収の壁は存在します。
103万円は所得税がかかる年収ラインですが、106万円と130万円の壁は社会保険料に関連する年収ラインです。
まずは、106万円と130万円の壁がそれぞれどのように異なるのかを見ていきましょう。
「103万円の壁」については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
106万円の壁が適用される条件とは?
106万円の壁は、主に社会保険料(健康保険・年金)に関する年収ラインであり、特にパートやアルバイトなど、扶養内で働く人々にとって重要なポイントです。
そのため、この壁を超えるか超えないかで、社会保険への加入義務が変わります。
1. 扶養家族の範囲内で働いている場合
106万円の壁は、配偶者の扶養を受けている場合に関係します。配偶者の扶養範囲内で働いているとき、年収が106万円未満であれば、配偶者の社会保険(健康保険や年金)の扶養に入れることになります。しかし、年収が106万円を超えると、扶養から外れ、自分自身で社会保険(健康保険・年金)に加入する義務が発生します。
2. 社会保険の加入条件
具体的には、年収が106万円を超えると、以下2つの対応が必要となります。
①健康保険
年収106万円を超えると、従業員として働いている場合は会社の健康保険に加入する必要が出てきます。パートの場合でも、106万円を超えると加入義務が発生します。
➁厚生年金
106万円以上の場合、年金の加入義務も発生し、個人で支払うべき年金保険料が必要になります。
年収が106万円を超える場合、月額賃金はおおよそ8万8,000円となります。
年収106万円を超えた場合の影響
年収が106万円を超えると、以下3つのような影響があります。
①配偶者の扶養から外れる
106万円を超えると、配偶者の扶養から外れるため、税制上の優遇(扶養控除など)がなくなります。
➁社会保険への加入が必要
自身で健康保険と厚生年金に加入する必要があり、健康保険料や年金保険料を支払うことになります。これにより、手取り収入が減る可能性があります。
③年末調整や確定申告の必要性
106万円を超えると、年末調整で自分の収入を報告する必要があり、場合によっては確定申告も行わなければなりません。特に、複数のアルバイトをしている場合など、収入が複数の場所からある場合は税金の計算や手続きが増えます。
配偶者控除や扶養控除について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
130万円の壁とは?扶養と社会保険の関係
次に、130万円の壁の特徴について見ていきます。
106万円の壁と同様に社会保険料の適用が変わる年収ラインですが、106万円の壁とはどの点が異なるのかを、この章で解説します。
130万円の壁が重要な理由
年収が130万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、社会保険の加入義務が発生します。
具体的に、以下の保険に加入し、自己負担で保険料を支払わなければなりません
1. 国民健康保険
配偶者の健康保険(被扶養者としての保険)から外れると、国民健康保険に加入する必要があります。国民健康保険は地方自治体が運営しており、住んでいる地域によって保険料が異なりますが、保険料は全額自己負担となります。
2. 国民年金
年収130万円を超えると、※国民年金(基礎年金)保険料も自己負担で支払うことになります。国民年金は、すべての日本国民が加入義務を負う公的年金制度です。
※国民年金保険料
2024年度の国民年金保険料は、月額16,980円(年間約203,760円)です。国民年金は、老齢基礎年金を受け取るために必要な最低限の保険料であり、全ての加入者が支払う必要があります。
3. その他の負担
130万円を超える年収の場合、国民健康保険と国民年金の支払いが義務付けられ、これらは給与から天引きされる形ではなく、自己で支払うことになります。その他にも、収入や居住地によっては、次のような負担が生じることがあります。
①介護保険料(年齢が40歳以上の場合)
➁その他税金(住民税、所得税などの税額増加)
参照サイト
・国民健康保険の保険料・保険税について
・国民年金保険料|日本年金機構
年収の壁を効果的に活用するための戦略
これまでお伝えしたように、年収の壁を越えた際には社会保険料や所得税の増加といった影響があります。
では、具体的に年収の壁を抑えるためにはどのようにすればよいのでしょうか。
最後に、年収の壁を効果的に活用するための戦略を見ていきます。
年収の壁を越えないことで家計への負担は軽減できますが、その一方で、将来の年金受給額が減少する可能性があることには留意が必要です。
年収の壁に関する参照サイト
年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省
106万円・130万円の壁を意識したシフト調整方法
年収の壁を越えないようにするためには、収入と勤務時間を効率よく管理することが重要です。
106万円・130万円の壁を意識したシフト調整方法として、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
①シフト表の作成と可視化
月ごとの収入を予測し、シフト表を作成することで、年収の壁を越えるリスクを減らせます。どれだけの時間を働く予定か、月々の収入がどれくらいになるかを把握しておくことが大切です。
➁年収の予測と調整
年間を通して106万円または130万円を超えないように、月ごとのシフトに加えて年収の予測を立て、前もって調整を行うことが効果的です。
③掛け持ち時の収入管理
複数のアルバイトやパートを掛け持ちしている場合、それぞれの収入が合算して106万円または130万円を超えないように管理することが重要です。
年収を調整する副業戦略
副業は、稼働時間や収入を調整しやすいため、年収の壁を意識した収入管理に適しています。
また、副業を通じてスキルを磨くことで、将来的にフリーランスや個人事業主として活躍する可能性も広げることもできます。
年収を意識した副業戦略のポイントとして、次の2つが挙げられます。
1. 副業の収入源を分散させる
一つの副業に依存せず、複数の副業を掛け持ちすることで収入源を分散できます。これにより、各副業の収入合計が年収の壁を越えないように調整可能です。
2. 固定収入のある副業を検討する
定期的に安定した収入を得られる副業を選ぶことも効果的です。例えば、定期的なオンライン仕事や契約業務は、毎月安定した収入が見込め、収入調整もしやすくなります。
副業に関しては以下の記事をご参照ください
配偶者控除を活かすための年収調整
年末調整や確定申告を通じて、給与所得が103万円を超えている場合でも、必要経費を差し引いたり、扶養控除を適用したりすることが可能です。
特に、フリーランスや副業をしている場合は、経費を適切に計上することで実際の収入を調整し、配偶者控除を受けることができる可能性が高まります。
ただし、この場合、給与収入だけでなく、副収入やフリーランス収入なども含めた課税所得が重要です。
控除が適用される条件は、納税者の所得と配偶者の所得によって異なります。
詳細については、以下の記事をご参照ください。
まとめ
今回の記事のまとめです。
「106万円の壁」とは、年収が106万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、自分で社会保険(健康保険や年金)に加入する義務が発生する年収ラインです。
さらに、年収が130万円を超えると、国民健康保険や国民年金への加入が義務付けられ、これらの保険料は全額自己負担となります。
また、40歳以上の場合は介護保険料の支払いも必要となり、税負担も増加します。
そのため、106万円・130万円の壁を意識したシフト調整や、有効な控除を活用することが重要です。