「年金と収入が月額50万円を超えると、受給額が減額されるって本当?」
在職老齢年金は、働きながら年金を受け取ることができる制度ですが、収入額に応じて年金が減額されることがあります。
ただし、この制度を上手に活用することで、老後の収入を調整しながら、自身のライフプランを柔軟に設計することが可能です。
この記事では、在職老齢年金の基本的な仕組みや計算方法をわかりやすく解説し、メリットやデメリット、さらに制度を効果的に活用するためのポイントをご紹介します。
この記事で分かること
- 在職老齢年金の概要
- 在職老齢年金の適用に関する注意点
- 在職老齢年金を最大限活用するためのポイント
在職老齢年金とは何か?その基本を理解しよう
それではまず、在職老齢年金の概要について見ていきましょう。
この制度は、働きながら年金を受け取る場合に適用され、収入に応じて年金額が調整されます。
この章では、年金が支給される条件や調整の具体的な仕組みについて詳しく解説していきます。
在職老齢年金の仕組み
在職老齢年金は、定年後に給与収入があっても、老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)を受け取ることができる制度です。
ただし、給与収入が一定の基準額を超える場合、年金額が減額されるか、一時的に支給停止されることがあります。
在職老齢年金には、主に以下の2つの特徴があります。
①給与収入と年金の調整
給与収入があっても老齢年金は受け取れますが、年金と給与の合計額が一定の基準を超えると、年金が減額されたり支給が停止されることがあります。具体的には、令和6年度の基準では、月額50万円を超える収入がある場合、老齢厚生年金の支給が停止される可能性があります。
➁老齢基礎年金と老齢厚生年金の関係
老齢基礎年金(国民年金)は給与収入に関係なく支給されますが、老齢厚生年金(厚生年金)は給与収入との調整が必要です。給与収入がある場合、年金と給与の合計が一定額を超えると、老齢厚生年金が支給停止になることがあります。
どんな人が対象?受給資格の条件
在職老齢年金の受給資格は、基本的に60歳以上で働いている人が対象です。
ただし、以下に示すような具体的な条件があります。
1. 年齢が60歳以上であること
在職老齢年金は、60歳以上の人を対象にした制度です。ただし、受給開始時期や給与収入の有無によって年金額が調整されます。
2. 厚生年金に加入していること(または加入していたこと)
在職老齢年金は、厚生年金に加入している(または加入していた)人が対象です。つまり、会社員や公務員など、厚生年金に加入している場合、年金を受け取ることができます。
3. 給与収入があること
在職老齢年金の特徴として、給与収入がある場合に年金の支給額が調整されます。給与収入が基準を超えると年金額が減額されたり、支給が一時的に停止されることがあります。
4. 特別支給の老齢厚生年金の場合は、60歳以上64歳未満
特別支給の老齢厚生年金は、60歳以上64歳未満の間に支給される年金です。この間に給与収入があると、年金額が減額されるか、支給が停止されることがあります。
在職老齢年金は、厚生年金に加入している人が対象となる制度です。
そのため、厚生年金に加入していない方(例:個人事業主など)は、この制度の対象外となります。
在職老齢年金の適用における注意点
次に、在職老齢年金に関する注意点を見ていきましょう。
第1章でも触れたように、在職老齢年金制度には月収の条件があり、またその計算方法についても理解しておくことが重要です。
年金が減額される条件を正しく理解する
在職老齢年金を活用する際の注意点は以下の3点です。
①給与収入と年金の合計額
在職老齢年金では、給与収入と年金受給額の合計が一定の基準を超えると、年金額が減額されるか支給停止になります。令和6年度の基準では、月額50万円を超える収入がある場合、老齢厚生年金の支給が停止される可能性があります。
➁繰上げ受給や繰下げ受給の影響
繰上げ受給を選ぶと年金額が減額され、繰下げ受給では年金額が増額されます。これらの選択によって年金受給額に大きな変動があるため、受給を開始するタイミングや受給額について慎重に検討することが必要です。
③国民年金保険料の免除や未納期間
国民年金保険料の免除や減額制度を利用した場合、または未納期間がある場合、将来受け取る年金額が減額される可能性があります。特に40年間の納付期間を満たしていない場合、満額の年金を受け取ることができません。これらの期間について確認し、早期に対応することが重要です。
在職老齢年金の計算方法
在職老齢年金の計算方法は、給与収入と年金の合計額に基づき、年金額が減額される仕組みです。
以下3つのポイントを押さえましょう。
1. 計算に必要な要素
①基本月額
老齢厚生年金の報酬比例部分(月額)。
➁総報酬月額相当額
その月の標準報酬月額+1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12。
2. 年金支給額の計算
合計が50万円以下
全額支給。
合計が50万円超
支給額 = 基本月額 − ( 基本月額 + 総報酬月額相当額 − 50万円) ÷ 2
3. 年金支給額の計算例
基本月額:15万円
総報酬月額相当額:40万円
合計:15万円 + 40万円 = 55万円(50万円を超える部分は5万円)
15万円 − (55万円 − 50万円) ÷ 2
= 15万円 − 5万円 ÷ 2
= 15万円 − 2万5,000円
= 12万5,000円
よって、上記の場合、実際に支給される年金額は、12万5,000円となります。
ワンポイント補足説明
基本月額
受給している老齢厚生年金の基本額
総報酬月額相当額
その月の給与収入に基づく金額
50万円
令和6年度の基準における支給停止調整額の限度額
在職老齢年金を最大限活用するためのポイント
では最後に、在職老齢年金を最大限活用するためのポイントを見ていきましょう。
具体的には、どのような対策が有効なのか、その方法について詳しく掘り下げていきます。
年金が減らない働き方の選び方
在職老齢年金を最大限活用するには、自身の収入、年金受給タイミング、生活費を総合的に考慮し、柔軟に働き方を調整することが重要です。適切な計画を立てることで、老後の生活をより充実させることができます。
在職老齢年金を最大限活用する方法として、以下の4つが挙げられます。
1. 収入と年金のバランスを調整する
在職老齢年金では、給与収入と年金の合計額が一定基準を超えると年金が減額されます。そのため、働き方を工夫し、収入が基準額を大きく超えないように調整することが有効です。例えば、収入を基準額ギリギリに抑えれば、年金減額を最小限にできます。
具体例
給与収入を基準額以下に調整するため、勤務時間を減らす、賞与の支給タイミングを見直すなどの対策が考えられます。
2. 退職時期や年金受給の開始時期を検討する
年金の繰上げ受給や繰下げ受給を選ぶことで、受け取る年金額を調整できます。働き続ける予定がある場合は、年金受給を繰り下げることで、支給停止や減額の影響を回避しながら将来の受給額を増やすことができます。
繰下げ受給のメリット
1年繰り下げるごとに8.4%増額されるため、老後の資金をより安定させることが可能です。
3. 社会保険料負担の軽減を考える
70歳以上で厚生年金保険の適用事業所に勤務する場合、被保険者として社会保険料を支払う必要がありません。この点を考慮し、70歳以降も働くことで、手取り収入を増やすことができます。
4. 収入や生活状況の見直し
家計全体の収支を見直し、無理なく働ける環境を整えることも大切です。ライフプランに合わせた働き方を選びつつ、必要であれば専門家(年金相談センターやファイナンシャルプランナー)に相談することで、最適な選択をサポートしてもらうのも良いでしょう。
令和6年現在、在職老齢年金の上限額の見直しや制度撤廃に関する法案が議論されています。
よって、今後の変更に備えて、制度を十分に理解しておくことが重要です。
まとめ
今回の記事のまとめです。
在職老齢年金は、定年後に給与収入があっても老齢年金を受け取れる制度です。
しかし、給与収入が一定額を超えると、年金額が減額されたり、支給が一時的に停止されることがあります。
なお、老齢基礎年金は収入に関係なく支給されますが、老齢厚生年金は給与収入に応じて調整されます。
年金額を減らさずに働くためには、収入と年金のバランスを調整したり、退職時期や年金受給開始時期を慎重に検討することが重要です。