月々の医療費が高額になると、家計への負担が大きくなってしまいますよね。
そんなときに知っておきたいのが「高額療養費制度」です。
この制度では、あらかじめ決められた「自己負担限度額」を超えた医療費が払い戻される仕組みになっています。
「でも、自己負担限度額ってどうやって決まるの?」「申請は難しくないのかな?」といった疑問を感じる方も多いのではないでしょうか?
この記事では、自己負担限度額の基本や計算方法、高額療養費制度の具体的な利用手順を、わかりやすく解説していきます。
この記事で分かること
- 高額療養費制度の基礎知識
- 自己負担限度額の計算方法
- 高額療養費制度を利用する手続き方法
自己負担限度額とは?高額療養費制度の基本を解説
まず、高額療養費制度の基本的な仕組みを見ていきましょう。
この制度は、医療費が一定額を超えた場合、その超過分が払い戻される仕組みです。
所得や家族構成に応じて自己負担限度額が設定されており、この制度を利用することで、医療費の負担を軽減することができます。
自己負担限度額の定義と役割
自己負担限度額とは、高額療養費制度において、1ヶ月の医療費において患者が自己負担しなければならない最大額を指します。
自己負担限度額は、患者の所得や家族構成に応じて異なり、支払うべき自己負担額の上限を定めることで、突発的な高額医療費の負担を軽減する役割を果たします。
自己負担限度額を決定する要素として、主に以下の3つが挙げられます。
①所得
所得が高い人は自己負担限度額が高く、所得が低い人は限度額が低く設定される傾向にあります。
➁家族構成
扶養家族の有無や家族全体の収入などが影響します。
③加入している保険
健康保険の種類(会社の健康保険や国民健康保険)によっても異なる場合があります。
参照サイト
・医療費の自己負担|厚生労働省
自己負担限度額によるメリット
自己負担限度額が家計にもたらすメリットとして、主に以下の3点が挙げられます。
1. 経済的負担の軽減
高額な医療費が発生しても、自己負担限度額を超えた分は健康保険で補填され、家計への負担が軽減されます。
2. 予測可能な医療費
自己負担限度額が設定されていることで、医療費の上限が明確になり、計画的な費用管理が可能になります。
3. 公平な負担の実現
所得や家族構成に応じて自己負担限度額が設定されるため、経済的に困難な状況にある人でも適切な負担額に調整されます。
高額療養費制度が適用される場合の所得区分
高額療養費制度が適用される場合、医療費の自己負担額は所得や年齢によって異なります。
所得が高い人ほど自己負担限度額が高く、低い場合はその限度額が低く設定されます。
この制度の所得区分は、主に以下の5つの段階に分かれています。
①住民税非課税者
➁約370万円未満
③約370万~770万円
④約770万~1,160万円
⑤約1,160万円以上
また、上記の区分は70歳以上か70歳未満かによって適用される金額が異なるため、次の章で詳しく見ていきましょう。
自己負担限度額の計算方法と仕組み
次に、自己負担限度額の求め方について見ていきましょう。
自己負担限度額は、一般的に自身の所得や家族構成をもとに決まります。
また、加入している健康保険や受けた治療内容によっても異なるため、この章で一緒に学んでいきましょう。
所得区分による自己負担限度額の違い
自己負担限度額は、年齢や所得区分によって異なります。
特に、70歳未満かどうかで適用される金額が異なるため、所得区分ごとの負担額を確認することが重要です。
70歳未満の自己負担限度額
まず、70歳未満の自己負担限度額について見ていきましょう。
以下の図1の表では、各所得区分に応じた自己負担限度額をまとめています。
所得区分(年収の目安) | 自己負担限度額(通常) | 自己負担限度額(多数該当) |
---|---|---|
住民税の非課税者等 | 35,400円 | 24,600円 |
~約370万円 | 57,600円 | 44,400円 |
約370万~770万円 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
約770万~1,160万円 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
約1,160万円~ | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
出典:厚生労働省『医療費の自己負担』より
「多数該当」とは、過去12ヶ月以内に3回以上自己負担限度額に達した場合、4回目以降の負担額が軽減される制度です。
参照サイト
・高額療養費の多数該当とは?【医療事務員がわかりやすく解説】 | 医療コンパス
70歳以上の自己負担限度額
次に、70歳以上の自己負担限度額についてです。
年収区分 | 自己負担限度額(通常) | 自己負担限度額(多数該当) |
---|---|---|
住民税非課税(所得が一定以下) | 15,000円 | - |
住民税非課税 | 24,600円 | - |
〜年収約370万円 | 57,600円 | 44,400円 |
年収約370〜約770万円 | 80,100円+(医療費−267,000円)×1% | 44,400円 |
年収約770〜約1,160万円 | 167,400円+(医療費−558,000円)×1% | 93,000円 |
年収約1,160万円〜 | 252,600円+(医療費−842,000円)×1% | 140,100円 |
出典:厚生労働省『医療費の自己負担』より
自己負担限度額を知りたい場合は、FPに相談するのもおすすめの方法です。
FPに相談できるサイト
・家計見直しに特化したFP無料相談
高額療養費制度を利用する手続きと流れ
繰り返しお伝えしますが、高額療養費制度の対象となる1ヵ月の自己負担限度額は、年齢や所得額によって決まっています。
それでは最後に、この制度を利用するための具体的な手続き方法について見ていきましょう。
申請の流れと必要書類
高額療養費制度を利用するための手続きは、以下の手順で行います。
主に、医療費の支払い後に手続きを進める形になります。
1. 医療機関での受診
高額療養費制度を利用するには、まず医療機関で診察や治療を受け、健康保険を適用してもらいます。この段階では通常の3割負担で済みます。
2. 自己負担額の支払い
医療機関で自己負担分を支払い、総医療費が自己負担限度額を超えた場合、その差額分について高額療養費制度が適用されます。
3. 高額療養費の申請
受診後、自己負担限度額を超える分の払い戻しを受けるため、申請手続きを行います。
申請には、以下の書類が必要となることがあります。
・申請書(健康保険組合などから入手)
・医療費の領収書
・診療報酬明細書(明細が必要な場合)
・健康保険証など
4. 申請先
加入している健康保険(会社の健康保険や国民健康保険など)を通じて行うため、自身が加入している保険組合や市町村の窓口に提出します。
5. 申請結果の通知
申請が受理されると、払い戻し額が通知されます。通常は数週間から1ヶ月程度で結果が届きます。
6. 払い戻しの受け取り
払い戻し金額は、指定した銀行口座に振り込まれることが一般的です。
高額療養費制度をスムーズに利用するためには、必要書類を早めに準備して申請することが大切ですね!
高額療養費制度の対象となる医療費と、対象外の医療費を把握しておく
自己負担限度額を計算する際の対象となるのは、健康保険が適用された医療費で、個人の負担割合(1~3割)に基づく金額です。
その他の諸費用や自由診療等の医療費は、計算対象には含まれないことに注意が必要です。
対象となる医療費
・健康保険が適用された診療費
(例:診察、手術、検査など)
・保険適用の入院費
(例:病室代、食事代、治療費)
・保険適用の薬剤費
(例:処方薬、病院で使われる薬)
・医師の指示による治療やリハビリ
(例:透析、放射線治療など)
対象とならない医療費
・自由診療
(例:美容整形、予防接種、健康診断)
・差額ベッド代
(個室や特別室の利用)
・保険適用外の医療器具や薬剤
(例:先進医療)
・一部の自己負担の追加費用
(例:選択療法、選択薬剤など)
対象・不対象の区別は難しいこともありますよね。
そんな時は、専門家に相談してみると安心ですね。
FPに相談できるサイト
・FP無料相談の保険チャンネル
まとめ
今回の記事のまとめです。
高額療養費制度の自己負担限度額は、1ヶ月に支払う医療費の上限額を示し、所得や年齢によって異なります。
特に70歳未満か70歳以上で適用される金額が異なるため、所得区分ごとの負担額を確認することが重要です。
また、自己負担限度額の計算には対象となる医療費とならない医療費があるため、注意が必要です。