つい先日、美容室で散髪中、お世話になっているマスターから興味深い話を聞きました。
なんと、先月にアパート一棟を投資目的で購入したとのこと。
彼女は個人事業主で、以前から投資目的の不動産を所有したいと話していました。
不動産投資は多くの投資家にとって魅力的な選択肢となっていますが、始める際には慎重な計画と知識が必要で、また成功させるためには、適切なポイントを押さえることが不可欠です。
この記事では、初めて不動産投資を検討する方に向けて、基本的なステップや注意すべきポイントをご紹介します。
この記事で分かること
- 不動産投資の基本的概要
- 不動産投資の魅力と始め方
- 資産形成における不動産投資の活用
不動産投資の基本
まずは不動産投資の基本的な知識についてみていきましょう。
不動産投資を行うことで、どのようなメリットやデメリットがあるのかを理解しておくことが大切です。
不動産投資とは
不動産投資とは、不動産を購入して賃貸収入や売却益などの収益を得る投資法です。
その収益には、賃料から得る「インカムゲイン」と、不動産を売却した際の利益である「キャピタルゲイン」の2つがあります。
- インカムゲイン
賃貸収入から経費やローン返済を差し引いた収支のことを指します。毎月安定した家賃収入を受け取れる可能性があり、景気変動の影響を受けにくいメリットがあります。 - キャピタルゲイン
不動産の購入費と売却費の差額により得た収益のことを指します。不動産価値の変動に左右され、リスクが高い反面、一度の取引で得られる利益は大きいのが特徴です。
不動産価値が安定して上昇する状況であれば、賃貸経営を行いつつ、適切なタイミングで売却することで、両方の収益を追求することも可能です。
ただし、リスクとリターンのバランスを考慮し、地域や経済状況に注意しながら投資を進めることが重要です。
不動産投資のメリットとデメリット
不動産投資には多くのメリットがあります。
以下にその要点をまとめます。
①安定した副収入の確保
家賃収入などの収入源を得ることができる可能性があります。また、投資用賃貸物件の入居状況を把握できるため、毎月の収入を計算しやすくなります。
➁融資を活用した低自己資金でのスタート
レバレッジ効果により、少ない自己資金で多額の不動産投資ローンを組むことができます。自己資金を最小限に抑えつつ、ローンを活用することで、資産の効率的な運用が可能となります。
③節税効果
家賃収入から経費を差し引くことで、所得税や住民税を節税できます。不動産所得は総合課税なので、他の所得と相殺でき、節税対策が可能です。
④相続税・贈与税対策
不動産は相続時に実勢価格より低く評価される傾向があり、相続税や贈与税の軽減が期待できます。建物部分は相続税評価額の60%前後、土地は70~80%程度が目安とされています。
⑤長期的な資産形成
アパートやマンション経営は通常、長期にわたって安定した収入が期待できます。これにより、長期的な視野で資産形成が可能であり、将来の年金代わりにも活用できます。
では次に、不動産投資のデメリットについて挙げてみます。
①高利回りの期待ができない
一般的にはミドルリスク・ミドルリターンの投資法であり、高い利回りは期待しづらい傾向にあります。
➁流動性が低い
不動産価格が高額であり、売買が頻繁に行われないため、流動性が低くなります。物件選びの失敗や市況の変動により、売却が難しくなる可能性があります。
③維持管理費用がかかる
初期費用として仲介手数料や頭金・税金・内装のリフォーム費用がかかるほか、経営を続ける際には固定資産税、都市計画税、火災保険料、地震保険料、修繕費、管理費用など多くの維持管理費用が発生します。
特徴をおさえておくためにも、メリット、デメリットを以下にまとめます。
メリットとして、副収入の確保、節税効果、相続・贈与税対策、長期的な資産形成などが挙げられます。特に節税効果は、不動産所得が総合課税で、他の所得と合算できる特長があります。
一方デメリットとして、短期的な資産形成には向かないという点が挙げられます。流動性が低いため、インカムゲインをメインとする場合は不向きとなります。
不動産投資のリスク管理
不動産投資は有望な収益を期待できる一方で、様々なリスクが潜んでいます。
以下は主な不動産投資におけるリスクとその対策です。
- 空室リスク
リスク:空室が生じると家賃収入が減少する可能性。
対策:人気エリアや条件の良い物件を選び、入居者の入れ替わりが激しい場合には適切な礼金設定をする。 - 家賃滞納リスク
リスク:入居者の経済状況が急変し、家賃滞納が発生する可能性。
対策:入居者の審査を徹底し、滞納が発生した場合は早急に対処する。 - 災害リスク
リスク:自然災害により物件が損傷し、保険金だけでは不足する可能性。
対策:ハザードマップを参考にし、耐震性の高い物件を選定。保険料と収益のバランスを考慮する。 - 管理不全のリスク
リスク:管理不足により物件価値が低下し、入居者がつきにくくなる。
対策:信頼できる管理会社を選定し、物件の維持管理に力を入れる。 - 事故物件になるリスク
リスク:物件内での事故や死亡が発生し、物件価値が下がり入居者がつきにくくなる。
対策:早急に問題を解決し、必要に応じて家賃を調整し、物件を手放すことも検討する。 - 借入額が多額になるリスク
リスク:多額のローンを抱え、収益が減少した場合に返済に苦しむ可能性。
対策:毎月の返済を安定的に行える収益を確保。返済能力の適正な範囲でローンを活用する。
当然ながら不動産投資は投資であり、それゆえにリスクが伴います。
肝要なのは、これらのリスクを検討し、適切な対処策を講じておくことです。
不動産投資に関する注意点
不動産投資に興味があるけれども、まずは何から取り掛かれば良いのか、という疑問が生じるかもしれません。
不動産投資にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴やリスクが存在します。
不動産投資を始める前に、これらの種類や注意点をしっかりと理解しておくことが大切です。
不動産投資の種類
不動産投資において、適切な投資対象を選ぶことは重要です。
不動産投資対象として、主に以下の5つが挙げられます。
- 区分マンション
複数の住戸に分割して販売された1つのマンションが対象。比較的小規模な投資が可能であり、リスクを分散しやすい特徴がある。 - 一棟アパート・一棟マンション
一棟アパートや一棟マンションが対象。複数の収入源が一つの建物に集約されるため、リスクを分散しやすく、家賃収入の安定性が高いという特徴がある。 - 戸建て住宅
一戸建て住宅が対象。中古物件が主流であり、築年数や立地によっては比較的少ない資金で始められるメリットがある。ただし、最低限のリフォーム費用が必要となる。 - シェアハウス・民泊
シェアハウスや宿泊施設としての利用が可能な戸建て住宅が対象。複数人からの収入が見込めるが、民泊を行う場合は許可が必要。 - 土地
建物に併用する土地、または独立した土地が対象。建物の補修や改修が不要で、負担費用が軽いのが特徴。
不動産投資入門:投資初心者向け
投資初心者が不動産投資を始めるには、以下の8つのポイントを押さえておくと良いでしょう。
これらを押さえておくことで、投資初心者でも比較的スムーズに不動産投資を始めることができます。
- 基本的な知識の習得
不動産投資の基本的な用語や手法、市場の特性などを学びましょう。書籍、オンラインコース、セミナーなどを利用して、基礎知識を身につけます。 - 投資目的の設定
不動産投資の目的を明確にしましょう。資産形成、収益の確保、将来の退職資金など、目的によって適した戦略や物件が異なります。 - 資産状況の確認
投資可能な資金や信用力、リスク許容度を確認します。これにより、どれだけの資金を投じることができるかを理解できます。 - 市場調査
投資を検討するエリアや物件の市場調査を行います。地域の需要と供給、将来の発展性などを考慮して、投資先を選定します。 - リスク管理
不動産投資にはリスクがつきものです。物件の種類、立地、市況などのリスクを理解し、それらに対する対策や予防策を考えましょう。 - 適切な資金計画
効果的な資金計画を立てるためには、有効なローンの利用や資産の組み合わせを検討しましょう。 - 専門家の協力
不動産エージェント、税理士、弁護士など、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、不動産投資の理解を深めることが可能となります。 - 継続的な学び
不動産投資は市況や法律の変化に敏感です。常に最新の情報を追い、継続的な学びを心掛けましょう。
不動産投資を始める上で、まずは基本的な知識を身につけることが大切です。
筆者は個人的に読書が一番の学び方だと思いますが、他にも様々な方法があります。
身近に不動産投資の経験がある人がいれば、その方の経験談を聞くのも良いでしょう。
不動産投資が資産形成に不可欠な理由
不動産投資が資産形成に不可欠な理由を大きく3つ挙げます。
①時間と手間がかからないので本業と両立できる
不動産投資は、主に不動産管理会社が日常業務を担当するため、本業との両立が可能です。これにより、本業に専念しながらも不労所得を得られる可能性があります。
➁老後資金を確保できる
不動産投資は老後の資金確保に寄与します。公的年金だけでは生活費を賄えない場合、不労収入を得ることで高齢になっても経済的に安定した生活が維持できる可能性があります。
③相続税対策に有効
資産の分散や適切な相続計画を通じて、相続時の税負担を軽減します。これにより将来の相続に備えた資産形成が可能です。
不動産投資は、将来の収入源や資産価値の増加を期待して行われることが多く、個人や企業の財務戦略の一環として重要な役割を果たします。
節税メリットを活かした不動産投資戦略
不動産投資における節税メリットの一つとして、所得税や住民税の対策があります。
その主な仕組みには、「減価償却」と「損益通算」が含まれます。
1. 減価償却
- 不動産投資の購入費用や建物・設備などの経年劣化による費用を、耐用年数に分割して経費に算入できる。
- 固定資産税、損害保険料、修繕費なども必要経費として計上できる。
2. 損益通算
- 不動産投資によって生じた赤字は、その損失を他の収入から差し引いて所得税や住民税を計算できる。
- 家賃収入から必要経費を差し引いた赤字額が損益通算対象となる。
例えば、1年間で得られる家賃収入が600万円あり、不動産を購入する際に支払った購入費用に対する減価償却費が600万円、その他にかかる必要な経費が50万円の場合を考えましょう。
この状況では、得られた家賃収入から購入費用の減価償却費やその他の必要経費を差し引いた結果が赤字となります。計算すると、600万円(家賃収入) - 600万円(減価償却費) - 50万円(その他必要経費) = -50万円となります。
この赤字額は損益通算によって、他の収入から差し引かれることになります。例えば、年収が1500万円の場合、1500万円(年収) - 50万円(赤字額) = 1450万円が実際の所得として計算されます。これにより、納税額が軽減され、節税の効果が期待できます。
これらの仕組みを上手に利用することで、不動産投資によって節税効果を得ることができます。
不動産投資の始め方
では最後に、不動産投資の始め方についてみていきましょう。
不動産投資物件を保有するまでの手順
不動産投資物件を保有するまでの手順は、以下の4つのステップが一般的です。
①市場調査と分析
投資を検討するエリアの市場調査を行い、将来の成長性や地域の需要供給バランスなどを分析します。
➁物件の選定
予算や投資目的に基づいて、適切な物件を選定します。物件の条件やロケーション、将来の利回りを検討します。
③資金の調達
必要に応じて融資を受けるなどして、投資資金を調達します。
④物件の取得と管理
物件の取得後は、入居者の募集やメンテナンス、法的な手続きなどを含む物件の管理が必要です。
物件を選定する前に、市場調査を行うことが大切です。同じ地域の同じような物件の入居率、最寄りの駅から距離はどれくらいなのか、などを検討するといいかもしれません。また融資は銀行からの借り入れなので、今後のローン返済シュミレーションを念入りにしておく必要があります。
適切なスタート時期
不動産投資を開始するタイミングは様々な要因に依存しますが、以下は一般的な考慮事項です。
ただし、これらはあくまで一般的な指針であり、個々の状況や市場状況により異なる場合があります。
- 経済状況の分析
不動産市場の一般的な経済状況を理解しましょう。景気の動向や金利の動向、雇用率などが不動産市場に影響を与えます。 - 地域の市場調査
興味のある地域の不動産市場を詳しく調査しましょう。需要と供給、賃貸市場の状況、将来の発展予測などを確認します。 - 金利の状況
金利が低い時期は、融資が比較的容易でコストが低いため、投資を開始する好機とされることがあります。金利の動向を把握し、適切なタイミングを見極めましょう。 - 自己の財政状況
自身の財政状況を評価し、投資に十分な資金があるかどうかを確認します。また、不動産投資に伴うリスクに備えるための緊急時の資金も考慮に入れましょう。 - 市場サイクルの理解
不動産市場にはサイクルがあり、景気の好況期と不況期が交互に訪れます。市場サイクルを理解し、それに応じた投資戦略を検討します。
これらの要因を考慮し、自身のライフステージやライフプラン目標に合わせて、不動産投資を開始するタイミングを見極めることが重要です。
資産運用目標設定と投資方針の決め方
資産運用目標設定と投資方針の決定は、正しい知識を身につけることが重要です。方針を立てずに投資を行うと、周りの意見に左右されたり、市場の変動に対して感情的に反応してしまう可能性があります。
以下に、資産運用目標設定と投資方針の決定の特徴をそれぞれまとめます。
資産運用目標設定
目的の明確化
まず、なぜ資産運用を始めるのかを明確にしましょう。退職資金の積み立て、教育資金の準備、将来の大きな支出に備えるためなど、具体的な目標を定めます。
期間の設定
目標達成までの期間を設定します。短期の目標と長期の目標では、運用方針やリスク許容度が異なる可能性があります。
リスク許容度の評価
自身がどれだけのリスクを受け入れられるかを評価します。リスクに対する忍耐度や心理的な側面も考慮して、リスク許容度を設定します。
ライフスタイルの反映
資産運用は生活スタイルに合わせる必要があります。将来のライフスタイルや予想される支出に基づいて目標を設定します。
インフレーションへの対策
目標達成までの期間内において、インフレーションの影響を考慮して、目標金額を設定します。
投資方針の決定
資産配分の決定
異なる資産クラス(株式、債券、不動産など)への投資割合を決定します。これはリスクとリターンのバランスを取る重要な要素です。
リバランス戦略の策定
投資ポートフォリオが目標の資産配分から逸脱した場合、定期的なリバランス戦略を策定します。これにより、リスクが適切に管理されます。
投資スタイルの選択
積極的なトレードや長期保有、成長株への投資など、自身の投資スタイルを選択します。これは投資のアプローチに影響を与えます。
市場状況の分析
現在の経済状況や金融市場の動向を分析し、それに基づいて投資方針を調整します。
専門家のアドバイスの活用
投資家は専門家のアドバイスや意見を参考にすることも重要です。金融アドバイザーや投資顧問との相談を検討しましょう。
以上のポイントを考慮して、自身の状況に合った資産運用目標と投資方針を設定することが重要です。また、目標や方針は変化する可能性があるため、定期的な見直しを行うこともおすすめです。
不動産投資に限らず、投資においては投資方針の決定が欠かせません。
正しい投資方針を設定することで、資産形成までのロードマップを作成することができます。
まとめ
今回の記事のまとめです。
不動産投資は、不動産を購入し、賃貸に出して収益を得る形態であり、その収益は主に「インカムゲイン」(賃料から得る収益)と「キャピタルゲイン」(不動産の売却による利益)の2つに分けられます。
不動産投資のメリットとしては、副収入の確保や節税の可能性、長期的な資産形成などが挙げられます。
一方、デメリットとしては、高利回りの期待ができないことや、維持管理費用がかかることがあります。
さらに、不動産投資には空室リスクや家賃滞納リスクなどのリスクも存在するため、適切な対策が必要です。
不動産投資においては、正しい知識とリスク管理が欠かせません。
市場の動向や法律を理解し、リスクを最小限に抑えつつ収益を最大化する戦略を検討することが大切です。
そして、情報収集や物件選定を慎重に行い、将来的な資産の増加を見越して長期的な視点を持つことも大切です。
補足説明
あくまでこの記事は、FPとしての観点から不動産投資について執筆したものです。
なお、不動産投資を勧誘するものではありませんので、ご了承ください。