ETF(上場投資信託)は、株式や債券、商品などに手軽に投資できる金融商品で、証券取引所でリアルタイムに売買できるのが特徴です。
ETFには、特定の指数に連動するインデックス型と、特定の指数を定めずに運用されるアクティブ型の2種類があります。
それぞれ異なる運用戦略を持ち、投資家は自身の目的や投資スタイルに合わせて選ぶことが重要です。
この記事では、ETFの種類と、ETF投資を始める際に知っておくべきポイントについて解説します。
この記事で分かること
- ETFを使った投資戦略
- ETFの種類
- ETF投資を始めるために知っておくべきこと
ETFを使った投資戦略
まず初めに、ETFを活用した投資戦略について見ていきましょう。
この章では、ETF投資を通じて構築できる投資戦略の内容を解説します。
ETFの概要については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
長期投資におけるETFの活用法
長期投資においてETF(上場投資信託)は、リスク分散と低コストの面で効果的な選択肢となります。
以下のポイントを押さえ、どのようにETFを長期的な投資戦略に組み込むかを見ていきます。
1. 分散投資の実現
ETFは、特定の株価指数や債券、商品などに連動するため、少額で広範囲な分散投資が可能です。
例えば、日経225やS&P500に連動するETFを通じて、数十社以上の企業に一度に投資することができます。
長期的な投資においては、リスク分散が重要な要素となります。
2. 低コストで投資
ETFは一般的に、アクティブファンドに比べて運用コストが低いとされています。
長期投資では、コストが積み重なることがリターンに影響を与えるため、低コストで運用できる点がメリットです。
3. 指数連動型の活用
インデックスETFは、市場全体や特定のセクター、地域に連動するため、特定の市場の成長を長期的に享受できる可能性があります。
例えば、S&P500に連動するETFを選ぶことで、米国株式市場の動向に合わせた投資が可能です。
4. ドルコスト平均法との併用
ETFは株式と同様に取引所で売買できるため、定期的に一定額を投資する「ドルコスト平均法」を取り入れることができます。
この方法により、短期的な市場の変動に左右されるリスクを軽減し、長期的に安定した投資が可能です。
5. 再投資による効果
ETFで得た配当金や利息を再投資することで、複利効果を得ることができます。
再投資を行うことで、長期的に資産を増やす助けとなります。
定期的な積立投資とETFの組み合わせ
定期的な積立投資とETFを組み合わせることで、リスクを分散し、コストを抑えながら、長期的な資産形成を目指すことができます。
具体的には、次の2つのメリットがあります。
1. 安定した成長の実現
定期的に積立てることで、市場の変動に関わらず一定の額を投資します。
この方法により、価格が低いときには多くの株式を購入し、価格が高いときには少なく購入することができ、長期的に安定した成長を期待できます。
ETFはインデックス型が多いため、市場全体の動きに連動し、安定したリターンを目指すことが可能です。
2. コスト効率の向上
ETFは一般的に信託報酬が低く、長期投資の際にコストを抑えやすい商品です。
さらに、定期的な積立投資によって購入単価が平均化されるため、価格の変動リスクを抑えつつ、投資にかかる総コストを減らすことができます。
インデックス投資に関する詳細は、以下の記事をご参照ください。
ETFの種類とは?|インデックスETFとアクティブETF
次に、ETFの種類について見ていきます。
冒頭でもお伝えしたように、ETFにはインデックスETFとアクティブETFの2種類があります。
この章では、各ETFの特徴やその違いについて、詳しく解説していきます。
インデックスETF
インデックスETFは、特定の市場指数(インデックス)に連動することを目的としたETFです。
例えば、日経225やS&P500などの株価指数に連動するETFがこれにあたります。
インデックスETFの特徴は以下の通りです。
目的
市場全体や特定のセクター、地域の指数に連動することを目指します。
運用手法
指数に基づいて、指数の構成銘柄をその割合で保有します。運用は指数と同じ動きを目指し、パフォーマンスの差(トラッキングエラー)ができるだけ小さくなるように運用されます。
コスト
インデックスETFは、アクティブ運用を行わないため、一般的に運用コストが低いです。これは、運用がパッシブであり、頻繁な売買が行われないためです。
利点
低コストで市場全体や特定の分野に分散投資できるため、長期投資に向いています。また、指数に連動するため、予測や市場の動向に影響されにくいです。
代表例
・S&P500 ETF(米国株式市場全体に投資)
・日経225 ETF(日本の代表的な株価指数に投資)
アクティブETF
アクティブETFは、特定の指数に連動するのではなく、ファンドマネージャーや運用チームが積極的に銘柄選定を行い、パフォーマンスの向上を目指すETFです。
インデックスETFとは異なり、運用の方針が市場の動向やテーマに応じて柔軟に変化します。
目的
市場のパフォーマンスを上回るリターンを狙って、アクティブに運用されます。
運用手法
ファンドマネージャーが銘柄の選定や売買タイミングを決定し、指数と異なる戦略を取ります。そのため、選ばれる銘柄が市場平均と異なることがあります。
コスト
アクティブ運用が行われるため、インデックスETFよりも運用コストが高くなる傾向があります。頻繁に売買が行われるため、取引手数料や運用費用がかさむことがあります。
利点
市場の平均を上回るリターンを狙うことができますが、その分リスクも伴います。短期的なパフォーマンスを意識した投資家には向いています。
代表例
・テーマ型ETF(例えば、テクノロジー、ヘルスケア、ESGなど特定のテーマに焦点を当てたETF)
・アクティブ運用を行う株式ETF
インデックスETFとアクティブETFの特徴のまとめ
先ほどご紹介した内容を踏まえて、インデックスETFとアクティブETFの特徴を以下の表にまとめました。
特徴 | インデックスETF | アクティブETF |
---|---|---|
運用方法 | 指数に連動したパッシブ運用 | ファンドマネージャーによるアクティブ運用 |
目的 | 市場の平均的なパフォーマンスを目指す | 市場を上回るリターンを目指す |
コスト | 低い | 高い |
リスク | 市場の平均的なリスクに連動 | ファンドマネージャーの運用能力に依存 |
利点 | 分散投資と低コストが可能 | 高いリターンを狙える可能性あり |
ETF投資を始めるために知っておくべきこと
ETF投資を始めるには、押さえておくべき基本的なポイントがあります。
最後に、投資を始める前に確認しておくべき事項を解説します。
投資リスクの把握
ETF投資を始める際には、投資リスクを十分に把握しておくことが非常に重要です。
以下に、ETF投資における主なリスクを7つ簡潔に解説します。
1. 市場リスク(価格変動リスク)
ETFは、株式や債券などの資産に投資しているため、対象となる市場や指数の動きに影響を受けます。
例えば、株式市場が下落すると、株式に連動するETFの価格も下がります。
市場の全体的なトレンドや経済状況により、ETFの価格が大きく変動する可能性があります。
対策:
・長期的な視点での投資を考え、市場の短期的な変動に過剰に反応しないよう心掛ける。
・投資するETFの対象資産や市場について十分に理解する。
2. 流動性リスク
流動性リスクとは、希望する価格でETFを買ったり売ったりできないリスクです。
取引量が少ないETFは、スプレッド(売買価格の差)が広く、売買が難しくなる場合があります。
特に、ニッチな市場に連動するETFや小型ETFは流動性が低いことがあります。
対策:
・各ETFの取引量や流動性を確認してから投資する。
3. 金利リスク
金利の変動がETFの価格に影響を与える場合があります。
特に債券に連動するETFや不動産ETF(REIT)などは、金利の上昇によって価格が下がることがあります。
金利が上昇すると、固定金利の債券の魅力が低下し、それに連動するETFの価格が下がる可能性があります。
対策:
・短期債券や金利に敏感でない資産を組み合わせることで、金利上昇に対する影響を軽減することができる。
4. 追跡誤差リスク
ETFは特定の指数(インデックス)に連動することを目指していますが、実際には、その指数のパフォーマンスを完璧に追跡することが難しい場合があります。
これを「追跡誤差(トラッキングエラー)」と言います。
追跡誤差が大きいと、インデックスに対するパフォーマンスの乖離が生じ、期待したリターンが得られないことがあります。
対策:
・追跡誤差が小さいETFを選び、その運用方法や指数の追跡手法を確認する。
5. コストリスク(費用リスク)
ETFには管理費(信託報酬)や取引手数料があります。
これらのコストが長期的に積み重なると、最終的なリターンに影響を与えることがあります。特に、信託報酬が高いETFは、長期投資でコストがリターンに大きな影響を及ぼすことがあります。
対策:
・信託報酬や取引手数料が低いETFを選択する
6. 通貨リスク
海外のETFに投資する場合、為替リスクが発生します。
特に、米国株に連動するETFや外国債券に連動するETFは、円安や円高の影響を受けることがあります。
為替の変動により、投資リターンが増減する可能性があります。
対策:
・外貨建てのETFに投資する場合は、為替リスクを考慮する。
・為替ヘッジ付きのETFを選ぶ
7. リバランスリスク
ETFは長期的な投資戦略において有効ですが、定期的なリバランス(資産の比率を調整すること)が必要です。
特に、インデックス型ETFは市場の変動に応じてリバランスを行いますが、定期的にリバランスを実施しないと、ポートフォリオのバランスが崩れる可能性があります。
対策:
・定期的にポートフォリオの見直しを行い、リバランスを実施する。
・資産配分に応じて、ETFの組み合わせを調整する。
投資を行う際には、さまざまな要因を考慮する必要があります。
金利や為替リスクについても、正しい知識を身につけておきましょう。
まとめ
今回の記事のまとめです。
ETF(上場投資信託)は、長期投資においてリスク分散と低コストを実現できる効果的な選択肢です。
特に、定期的な積立投資を行うことで、市場の変動に左右されることなく安定的な成長を目指すことができます。
また、ETFは一般的に信託報酬が低いため、長期的に投資コストを抑えることができます。
ただし、ETFにはインデックス型とアクティブ型の2種類があり、それぞれ異なる特徴があります。
そのため、投資を始める前に各ETFの特徴をしっかり理解し、リスクを十分に把握することが重要です。