『後見人の役割って、それぞれどう違うの?』
後見人と言っても、実は、その役割や権限は種類によって大きく異なります。
成年後見人、保佐人、補助人の特徴を理解することで、どのタイプが自身や大切な人に最適なのかが見えてきます。
この記事では、後見人の種類ごとの具体的な役割や特徴をわかりやすく解説していきます。
この記事でわかること
- 後見人の種類について
- 後見人の役割と責任
- 後見人の選び方と注意点
後見人の種類について
冒頭でもお伝えしたように、後見人は法的な権限を持つ重要な役割を担っており、その種類にはいくつかの選択肢があります。
まず初めに、この後見人の種類について一緒に学んでいきましょう。

後見人制度の概要については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
2つの後見人制度:法定後見人制度と任意後見人制度
後見人制度は、判断能力が不十分な人を法的に支援するための制度で、後見制度には以下の2つの種類があります。
1. 法定後見制度(成年後見人)
判断能力が不十分な人に対して、家庭裁判所が選任する後見人制度です。
法律上、支援が必要な人の生活全般について支援・管理します。
さらに、法定後見人は次の3つに分けられます
①後見(成年後見人)
認知症、知的障害、精神障害などにより、判断能力が通常欠けている方に対して、契約や財産管理などのサポートを行います。
②保佐(成年保佐人)
認知症、知的障害、精神障害などにより、判断能力が一部制限されている方に対し、契約や財産管理などのサポートを行います。
③補助(成年補助人)
認知症、知的障害、精神障害などにより、判断能力が不十分な方に対し、契約や財産管理の一部をサポートします。
2. 任意後見人制度
任意後見制度は、あらかじめ自分が判断能力を欠く可能性があるときに、信頼できる人を後見人に指定する制度です。
契約に基づいて後見人が選任され、家庭裁判所の監督を受けながら支援を行います。
また、契約時に具体的に支援内容を定めておくことができます。

任意後見契約は、公証人が作成する公正証書により締結しなければなりません。
参照サイト
・法務省:『成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A』
後見人に関する用語の説明
後見人制度には、専門的な用語が多く登場します。
先ほどご紹介した「被後見人」や「補助人」もその一部です。
この制度における「後見人」とは、判断能力が欠けている方を支援し、法律に基づいた範囲で活動する役割を担います。
今回は、後見人制度で理解しておきたい5つの重要な用語について、それぞれ解説します。
①被後見人
被後見人とは、後見人制度を利用して支援を受ける人のことです。
具体的には、判断能力が不十分で、重要な法的手続きや契約を自身で行うことが難しい方です。
家庭裁判所が後見人を選任し、その後見人が支援を行います。
参照コラム
・裁判所:『後見開始』
②保佐人
保佐人は、後見人制度において、判断能力が部分的に欠けている人に対して選任される支援者です。
保佐人は、重要な契約や取引など、特定の分野において支援を行います。
被後見人が自身で判断できる場合でも、重大な取引や法的手続きに関しては保佐人の同意が必要となることがあります。
参照コラム
・裁判所:『保佐開始』
③補助人
補助人は、判断能力が不十分な人を支援する役割を持つ人物です。
補助人は、日常的な生活のサポートを行いますが、支援の範囲は比較的限定的であり、重要な契約や手続きに関してのみ関与する場合が多いです。
補助人の支援は、被後見人の同意を前提とする場合もあります。
参照コラム
・裁判所:『補助開始』
④後見監督人
後見人(成年後見人)の活動が適切に行われているかを監督する役割を担う人物です。
家庭裁判所が選任し、後見人の業務をチェックすることが求められます。
⑤後見人選任申立人
後見人制度を利用するために、家庭裁判所に後見人の選任を申し立てる人です。
通常、家族や親戚、福祉関係者がこの役割を担います。

後見人が、できること・できないことについて詳しく知りたい方は、以下をご参照ください。
関連コラム
・後見人ができること・できないこと|誤解しやすい5つのポイント解説
後見人になるための条件と制限について
後見人になれる人となれない人について見ていきましょう。
後見人になれるのは、一定の条件を満たした成人で、判断能力があることなどが求められます。
一方、後見人になれない人には、未成年者や法定代理人を解任された人などが含まれます。

この章では、上記2つの違いを押さえておきましょう。
後見人になれる人
後見人として選任されるには、以下3つの条件を満たしている必要があります。
①成人であること
後見人は成人でなければならず、未成年者は後見人として選任されることはありません。
②判断能力があること
精神的に安定しており、意思決定を行う能力(判断能力)を有し、自身の意思で適切な行動ができることが条件です。
③信頼できる人物
後見人には、財産や生活に関する重要な決定を行う責任があり、信頼性が高く、誠実に対応できる人物であることが求められます。
後見人になれない人
一方、後見人になれない人には、以下3つのような条件があります。
①未成年者
未成年者は法的に契約を結ぶことができないため、後見人にはなれません。
②破産者や法定代理人を解任された人
財産管理に問題がある人、破産手続きを経ている人、または法定代理人としての職務を解任された人などは、後見人に選任されません。
③成年被後見人や被保佐人
判断能力が欠けていると認定された成人(成年被後見人)や、一部の判断能力が制限された成人(被保佐人)は後見人になることができません。

代表的なのは上記の3つですが、これらに加えて、以下の条件等に該当する方も後見人にはなれません。
④後見人としての適性に欠ける人
精神的・肉体的に不安定で、責任を果たせない人。
⑤利益相反が生じる人
被後見人と利益が衝突する恐れがある人。
⑥家庭裁判所が適格性を欠いていると判断した人
家庭裁判所が後見人として不適格と判断した人。
⑦過去に重大な不正行為を行った人
経済的な不正行為や社会的非行に関与した人。
⑧行方不明者
行方不明で所在が不明な人。
合わせて読みたいコラム
・社会福祉士とは?仕事内容、試験の受験資格やなり方を簡単に解説
後見人の選び方と注意点
最後に、後見人の選び方と注意点について見ていきましょう。
後見人を選ぶ際には、家族や専門家などの選択肢があり、それぞれの特性や役割を考慮して選ぶことが大切です。

後見制度についてFPに相談することは可能ですが、その際の相談内容は主に財産管理に関するアドバイスに限られます。
後見人を選ぶ際の注意点とは?
後見人を選ぶ際に重要なのは、信頼性、関係性、そして専門知識の3つのポイントです。
まず、後見人には被後見人の生活や財産を管理する責任があるため、信頼性と誠実さが大切です。
信頼できる人物を選ぶことが、後見制度を円滑に進める鍵となります。
次に、被後見人との関係性です。
親族や信頼関係が築かれている人が選ばれることが一般的ですが、場合によっては、専門家や第三者を後見人として選ぶこともあります。
特に、親族内で争いが生じる恐れがある場合は、中立的な立場の人物を選ぶことが有効です。
最後に、専門知識や経験も考慮すべき要素です。
法的な手続きや財産管理など、専門的な知識が求められる場面では、弁護士や司法書士などの専門家を後見人に選ぶことが望ましいです。

後見制度については、弁護士や司法書士のほか、社会福祉士やファイナンシャルプランナー(FP)にも相談可能です。
合わせて読みたいコラム
・FPに相談するメリットとは?お金と保険の専門家だからできること
まとめ
今回の記事のまとめです。
後見人制度は、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
法定後見制度では、後見、保佐、補助の3つの役割を担う後見人が、被後見人を支援します。
後見人に選任されるには、成人であり、判断能力があり、信頼できる人物であることが求められます。
なお、未成年者や破産者、判断能力が不十分な人は後見人になれないため、注意が必要です。