『相続に伴い名義変更が必要になった場合、どのような手続きが必要?』
相続が発生すると、故人の財産を相続人の名義に変更する手続きが求められます。
しかし、具体的な手続きや必要な書類、注意点については、多くの人が十分に理解していないのが実情です。
本記事では、相続時の名義変更に関する具体的な手続きや必要な書類について詳しく解説します。
この記事で分かること
- 名義変更の必要性と目的
- 名義変更の具体的な手続き
- 名義変更をスムーズに進めるためのポイント
相続時の名義変更とは?
それではまず最初に、相続時の名義変更についての概要を見ていきます。
なぜ相続時の名義変更が必要なのか、当たり前に感じるかもしれませんが、その本質について見ていきましょう。
名義変更の必要性
相続時に名義変更が必要になる理由として、次の3点が挙げられます。
①法的な正当性
相続が発生した際には、故人が所有していた財産(不動産や預貯金など)の名義を相続人に変更する必要があります。これにより、法的にその財産の所有権が明確になり、相続人は故人の財産を適切に管理し、利用できるようになります。
➁財産管理の円滑化
名義を変更することで、相続人は財産を自由に管理でき、必要に応じて売却や利用を行うことが可能になります。これにより、日常の財産管理がスムーズになります。
③税務上の義務
名義変更を行うことで、相続税の申告や納付がスムーズに進むため、税務上の義務を果たすことができます。特に不動産の場合、名義が変更されていないと相続税の評価に影響を与えることがあります。
参考資料サイト
・法務省:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~
名義変更の目的
一方で、名義変更の目的には、以下の3点が挙げられます。
①権利の移転
名義変更の主な目的は、故人から相続人への権利の移転を正式に行うことです。これにより、相続人は故人の財産を合法的に引き継ぐことができます。
➁トラブル防止
名義が変更されていない状態では、将来的に財産の取り扱いや相続に関するトラブルが発生する可能性があります。名義変更を行うことで、これらのリスクを軽減し、トラブルを未然に防ぐことができます。
③資産管理の明確化
名義変更を行うことで、相続人は資産の管理状況を明確に把握できるようになります。これにより、適切な管理や計画を立てやすくなり、相続人自身の将来に向けた資産形成にも寄与します。
参考資料サイト
・法務省:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~
名義変更の対象となる6つの財産
相続に伴う名義変更の対象となる財産には、主に以下6つのようなものがあります。
①不動産
土地や建物などの不動産は、相続が発生すると名義変更が必要です。この手続きは法務局での登記によって行われます。
➁預貯金
銀行に預けられた預金や定期預金も名義変更の対象です。相続人が預金を引き出すためには、名義を変更する手続きを行う必要があります。
③株式・有価証券
株式や投資信託などの有価証券も名義変更が必要です。証券会社を通じて、相続人名義に変更します。
④自動車
故人名義の自動車も名義変更の対象です。この手続きは運輸支局で行うことができます。
⑤動産
家具、家電、貴金属、宝石などの動産も相続時に名義変更が必要です。具体的には、貴金属や絵画などの高額な動産については、所有権の証明書や領収書が求められることがあります。
⑥その他の資産
特許権、著作権、商標権などの知的財産権も名義変更の対象となる場合があります。これらは、専門の機関で手続きを行う必要があります。
名義変更が行われない場合のリスク
次に、名義変更が行われない場合のリスクについて考えます。
先ほど挙げた6つの財産について、名義変更をしないことで生じるリスクを解説します。
名義変更が行われない場合の6つのリスク
名義変更が行われない場合、以下6つのようなリスクが考えられます。
①法的な所有権の不明確化
名義変更を行わないと、故人の財産が誰のものであるかが不明確になります。このため、相続人間での権利関係が曖昧になり、トラブルの原因となります。
➁資産管理の困難
名義変更が行われていないと、相続人が故人の財産を管理したり、利用したりすることが難しくなります。例えば、預金を引き出したり、不動産を売却したりする際に、名義が故人のままだと手続きが進まないことがあります。
③税務上の問題
名義が変更されていない場合、相続税の申告や納付において問題が発生することがあります。相続税は相続が発生した時点で課税されるため、名義変更を行わないと、税務上の義務を果たせなくなります。
④相続トラブルのリスク
名義変更が行われていないと、他の相続人や親族との間で財産に関する争いが発生する可能性があります。特に、相続人が複数いる場合には、名義の不明確さがさらなるトラブルを招きかねません。
⑤資産の流動性の低下
名義変更を行わないことで、故人の財産が流動性を失います。不動産や株式を売却する際には名義が相続人に変更されていなければ取引ができず、資金の流出入が制限されます。
⑥遺族への負担
名義変更が行われていないと、故人の遺族や相続人に対して経済的・精神的な負担が増えることがあります。特に、手続きが複雑な場合や争いが生じた場合、長期間にわたってストレスがかかることがあります。
名義変更の具体的な手続き
では最後に、名義変更の具体的な手続きについて見ていきましょう。
ここでは主に、故人が亡くなった際に行うべき3つの手続きについて解説します。
不動産の名義変更手続き
相続に伴う不動産の名義変更手続きは重要なプロセスです。
以下に、具体的な手続きの流れを説明します。
1. 相続の開始
相続が発生したら、まず故人の遺言書があるかどうかを確認します。遺言書がある場合、その内容に従って手続きを進めます。
2. 相続人の確定
相続人を確定するために、戸籍謄本や住民票を取得します。故人の出生から死亡までの戸籍を収集し、相続人の権利を確認します。
3. 遺産分割協議
相続人全員で遺産分割協議を行います。これにより、不動産を含む遺産をどのように分割するかを決定します。合意が得られた場合、遺産分割協議書を作成します。
4. 不動産の評価
名義変更を行う不動産の評価額を算出します。評価額は相続税の計算にも影響しますので、正確に行う必要があります。
5. 名義変更の申請
不動産の名義変更には、以下の書類を準備して法務局に申請します。
・遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印が必要)
・戸籍謄本(故人のものと相続人のもの)
・不動産の登記簿謄本
・評価証明書(必要な場合)
・申請書(法務局の所定の様式)
6. 登記手数料の支払い
不動産の名義変更には登記手数料が必要です。手数料は不動産の評価額に基づいて算出されます。
7. 登記の完了
法務局が手続きを完了すると、名義変更が正式に完了します。新しい登記簿謄本を取得して、名義変更が完了したことを確認します。
不動産相続時の名義変更には、期限が3年以内であることが重要なポイントです。
詳しくは以下のサイトをご参照ください。
【法務省/相続登記の義務化】不動産を相続したらかならず相続登記!
銀行口座の名義変更手続き
銀行口座の名義変更手続きについては、以下2つのポイントを押さえておくと良いでしょう。
1.必要書類の準備
①相続人の戸籍謄本(抄本)
相続関係を証明するために必要です。
➁故人の戸籍謄本
故人の死亡を証明します。
③遺言書(あれば)
遺言がある場合、その内容を確認するために必要です。
2.銀行への申請
①銀行窓口での手続き
必要書類を持参し、銀行の窓口で名義変更の手続きを行います。
➁オンライン手続き(対応している場合)
一部の銀行では、インターネットバンキングを通じて名義変更ができる場合もあります。
銀行口座の名義変更には、最短で約1カ月程度の時間がかかります。
詳しくは以下のサイトをご参照ください。
銀行口座の相続 名義変更する際の注意点と手続きの流れ | 相続会議
車両などの名義変更手続き
相続による車両の名義変更手続きについて、以下に2つのポイントを挙げます。
1.必要書類の準備
・相続人であることを証明する書類(戸籍謄本や遺言書など)
・車両の登録証明書(自動車検査証)
・名義変更申請書(陸運局で入手)
・自動車税の納税証明書
・相続人の印鑑(実印)
2.手続きの流れ
・遺産分割協議
相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が車両を相続するか決定します。
・名義変更の申請
所定の書類を用意し、管轄の陸運局にて名義変更の手続きを行います。申請書に必要事項を記入し、提出します。
・手数料の支払い
名義変更には手数料がかかるため、所定の料金を支払います。
車両の名義変更を例に挙げましたが、相続時の名義変更には必要書類の準備や手続きに労力がかかります。
そのような場合は、弁護士に相談してみると良いでしょう。
相続に伴う「名義変更手続き」は何をどうすれば良い? | Authense法律事務所
まとめ
今回の記事のまとめです。
相続時の名義変更は、相続人が財産の正式な所有者であることを証明し、資産管理を円滑にするために必要な手続きです。
名義変更を行うことで、財産の権利関係が明確になり、相続人間のトラブル防止や適切な税務申告が可能になります。
対象となる財産は、不動産、預貯金、株式、自動車など多岐にわたります。
名義変更を怠ると、所有権が不明確になり、資産管理や税務上の問題が生じるリスクがあるため、早めの対応が重要です。