『相続に伴い名義変更が必要になった場合、どのような手続きが必要?』
相続が発生すると、故人の財産を相続人の名義に変更する手続きが求められます。
しかし、具体的な手続き方法や注意点については、多くの人が十分に理解していないのが実情です。
そこで本記事では、相続時の名義変更に関する具体的な手続きや必要な書類について、わかりやすく解説していきます。
この記事で分かること
- 相続時の名義変更の必要性と目的
- 相続時の名義変更の具体的な手続き
- 相続時の名義変更をスムーズに進めるためのポイント

相続時に必要な手続きについて、詳しく見ていきましょう。
相続時の名義変更とは?
まず最初に、相続時の名義変更についての概要を見ていきます。
なぜ相続時の名義変更が必要なのか、当たり前に感じるかもしれませんが、その本質について見ていきましょう。

相続時に名義変更をしないリスクを理解しておきましょう。
名義変更の必要性
相続時に名義変更が必要になる理由として、次の4点が挙げられます。
①法的な正当性
故人の財産(不動産や預貯金など)の名義を相続人に変更することで、法的に所有権が明確になり、相続人はその財産を適切に管理・利用できるようになります。
➁財産管理の円滑化
名義を変更することで、相続人は財産を自由に管理でき、売却や利用が可能となり、日常の管理がスムーズになります。
③税務上の義務
名義変更を行うことで、相続税の申告や納付がスムーズに進み、特に不動産の場合は評価に影響を与えることなく、税務上の義務を果たすことができます。
④相続トラブル防止
名義変更を行うことで、財産の取り扱いや相続に関するトラブルを未然に防ぎ、リスクを軽減できます。
参照サイト
・法務省:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~
名義変更の対象となる6つの財産
相続に伴う名義変更の対象となる財産には、主に以下6つがあります。
①不動産
土地や建物などの不動産は、相続発生後に名義変更が必要で、手続きは法務局での登記によって行われます。
➁預貯金
銀行に預けられた預金や定期預金も名義変更の対象で、相続人が引き出すためには、銀行で手続きを行う必要があります。
③株式・有価証券
株式や投資信託などの有価証券も名義変更が必要で、証券会社や銀行を通じて相続人名義に変更します。
④自動車
故人名義の自動車も名義変更が必要で、運輸支局で手続きを行い、その後保険会社での手続きも必要です。
⑤動産
家具、家電、貴金属、宝石などの動産も相続時に名義変更が必要で、高額なものには所有権証明書や領収書が求められることがあります。
⑥その他の資産
特許権、著作権、商標権などの知的財産権も名義変更が必要で、専門機関で手続きを行います。
参照コラム
・相続時精算課税制度ってどんな制度?概要や仕組みについての解説
名義変更が行われない場合のリスク
次に、名義変更が行われない場合のリスクについて見ていきましょう。
先ほど挙げた6つの財産について、名義変更を行わないことによるリスクを解説していきます。

法的・税務的なリスク以外にも、どのようなリスクが伴うのかを把握しておきましょう。
名義変更が行われない場合の6つのリスク
相続時に名義変更が行われない場合、以下6つのリスクが考えられます。
①法的な所有権の不明確化
名義変更を行わないと、財産の所有者が不明確となり、相続人間で権利関係が曖昧になり、トラブルの原因になります。
➁資産管理の困難
名義変更が行われていないと、相続人は故人の財産を管理・利用できず、例えば預金の引き出しや不動産の売却が進まないことがあります。
③税務上の問題
名義変更が行われていない場合、相続税の申告や納付に問題が発生し、税務上の義務を果たせなくなることがあります。
④資産の流動性の低下
名義変更を行わないと、故人の財産が流動性を失い、不動産や株式の売却ができず、資金の流出入が制限される可能性があります。
⑤遺族への負担
名義変更が行われていないと、故人の遺族や相続人に対して経済的・精神的な負担が増え、長期間にわたりストレスがかかることがあります。

名義変更の具体的な手続き
では最後に、名義変更の具体的な手続きについて見ていきましょう。
ここでは主に、故人が亡くなった際に行うべき3つの手続きについて解説していきます。

不動産、銀行口座、車両の3つを掘り下げていきますね。
不動産の名義変更手続き
相続が発生した際、不動産の名義変更は必要な手続きとなります。
以下に、具体的な手続きの流れを7つのポイントで解説します。
1. 相続の開始
相続が発生したら、まず故人の遺言書を確認し、遺言書があればその内容に従って手続きを進めます。
2. 相続人の確定
相続人を確定するために、故人の出生から死亡までの戸籍謄本や住民票を取得し、相続人の権利を確認します。
3. 遺産分割協議
相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産を含む遺産の分割方法を決定した後、合意が得られたら遺産分割協議書を作成します。
4. 不動産の評価
名義変更を行う不動産の評価額を算出します。
5. 名義変更の申請
不動産の名義変更には、以下の書類を準備して法務局に申請します。
・遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印が必要)
・戸籍謄本(故人のものと相続人のもの)
・不動産の登記簿謄本
・評価証明書(必要な場合)
・申請書(法務局の所定の様式)
6. 登記手数料の支払い
不動産の名義変更には登記手数料が必要で、手数料は不動産の評価額に基づいて算出されます。
7. 登記の完了
法務局で手続きが完了すると、名義変更が正式に終了し、新しい登記簿謄本でその確認ができます。

不動産相続時の名義変更には、期限が3年以内であることが重要なポイントです。
参照サイト
【法務省/相続登記の義務化】不動産を相続したらかならず相続登記!
銀行口座の名義変更手続き
銀行口座の名義変更手続きについては、以下2つのポイントを押さえておきましょう。
1.必要書類の準備
①相続人の戸籍謄本(抄本)
相続関係を証明するために必要です。
➁故人の戸籍謄本
故人の死亡を証明するために必要です。
③遺言書
遺言がある場合、その内容を確認するために必要です。
2.銀行への申請
①銀行窓口での手続き
必要書類を持参し、銀行の窓口で名義変更の手続きを行います。
➁オンライン手続き(対応している場合)
一部の銀行では、インターネットバンキングを通じて名義変更ができる場合もあります。

銀行口座の名義変更には、最短で約1カ月程度の時間がかかります。
参照サイト
銀行口座の相続 名義変更する際の注意点と手続きの流れ | 相続会議
車両などの名義変更手続き
相続による車両の名義変更手続きについては、以下2つのポイントを押さえておきましょう。
1.必要書類の準備
・相続人であることを証明する書類(戸籍謄本や遺言書など)
・車両の登録証明書(自動車検査証)
・名義変更申請書(陸運局で入手)
・自動車税の納税証明書
・相続人の印鑑(実印)
2.手続きの流れ
①遺産分割協議
相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が車両を相続するか決定します。
②名義変更の申請
所定の書類を用意し、管轄の陸運局にて名義変更の手続きを行います。
③手数料の支払い
名義変更には手数料がかかるため、所定の料金を支払います。

相続時の名義変更には労力がかかるため、そのような場合は専門家に相談することがおすすめですよ。
合わせて読みたいコラム
・遺産分割協議書の作成費用は?4つの専門家ごとに比較!
まとめ
今回の記事のまとめです。
相続時の名義変更は、相続人が財産の正式な所有者であることを証明し、資産管理を円滑に進めるために必要な手続きです。
対象となる財産は不動産、預貯金、株式、自動車など多岐にわたり、
名義変更を行うことで相続人間のトラブルを防ぎ、適切な税務申告が可能になります。