レバレッジ型やインバース型の投資信託は、日経平均株価などのベンチマークに対して異なる動きをする特徴を持っています。
レバレッジ型はその2倍の値動きを、インバース型は逆方向の動きをするため、市場の動きに応じて投資家は戦略的な売買を行うことが可能です。
ですが、これらの投資信託は、通常の投資信託に比べて複雑な仕組みを持っており、リターンが大きい一方でリスクも高くなります。
そのため、投資家はその特性を十分に理解し、リスク管理をしっかり行いながら運用することが重要です。
この記事で分かること
- レバレッジ型投資信託の仕組み
- インバース型投資信託の仕組み
- レバレッジ型とインバース型投資信託のリスク管理
レバレッジ型投資信託とは?
まず初めに、レバレッジ型投資信託について見ていきます。
これは、市場の変動に対して倍増したリターンを狙う金融商品で、特に市場が上昇する場面で大きな利益を得ることができます。
レバレッジ型投資信託は、ブル型投資信託とも呼ばれます。
レバレッジ型投資信託の基本的な仕組み
レバレッジ型投資信託は、投資家が少ない資金で大きなリターンを目指すための金融商品です。
基本的な仕組みとしては、以下の4つの特徴があります。
1. レバレッジ効果
レバレッジ型投資信託は、証拠金や借入金を使って資産を増やし、通常の投資信託よりも大きな投資を行います。
この仕組みにより、相場が上昇した場合には通常よりも大きなリターンを得ることができます。
たとえば、レバレッジが2倍の場合、基準となるインデックスが1%上昇すると、レバレッジ型投資信託は2%の利益を得られる仕組みです。
2. 複利効果の利用
レバレッジ型投資信託では、利益が再投資される場合もあり、複利効果を利用することができます。
これにより、長期間の運用でより大きなリターンを期待できることもありますが、相場が逆に動いた場合は損失が膨らむリスクもあります。
3. 相場の上昇時に利益を最大化
レバレッジ型投資信託は、基本的に相場が上昇しているときに利益を最大化することを目指します。
インデックスなどが上昇する局面で強みを発揮し、通常の投資信託よりも速いペースでリターンを得ることが可能です。
4. 高いリスク
レバレッジ型投資信託は、相場の下落時には逆に大きな損失を被るリスクがあるため、運用には注意が必要です。
相場が予想と反対の動きをした場合、損失も拡大しやすく、元本割れのリスクがあります。
レバレッジ型投資信託のメリットとデメリット
レバレッジ型投資信託のメリットとデメリットを、以下にそれぞれ2つずつ挙げます。
メリット
①大きなリターンの可能性
レバレッジを利用することで、相場の上昇局面で通常の投資信託よりも大きな利益を得ることができます。例えば、2倍のレバレッジを使えば、インデックスが1%上昇すると2%のリターンが得られます。
➁少ない資金で大きな投資が可能
少額の資金でもレバレッジを活用することで、より多くの資産を運用でき、効率的に利益を追求することができます。
デメリット
①高リスク
レバレッジ型投資信託は、相場が下落した場合、損失も倍増するため、高いリスクを伴います。市場の予測が外れた場合、大きな損失を被る可能性があります。
➁長期保有に不向き
市場の変動をすべて見通すことは不可能なため、不測の事態が発生すると、予期しないリスクが大きくなる可能性があります。
レバレッジ型投資信託の代表例
レバレッジ型投資信託の代表例として、以下のような商品があります。
日経平均レバレッジ型ETF(上場投資信託)
日本の株式市場に連動する日経平均株価をベースに、2倍または3倍のレバレッジをかけたETF(Exchange-Traded Fund)です。
市場が上昇すれば、通常のETFよりも高いリターンを目指すことができますが、その分、下降時には損失も増大します。
S&P 500レバレッジ型ETF
米国の代表的な株価指数であるS&P 500をベースにしたレバレッジ型ETFです。
例えば、S&P 500に対して2倍、3倍のリターンを目指す商品があり、市場が上昇すれば高い利益を得ることができますが、下落時の損失も大きくなるリスクがあります。
iFree ETF S&P500レバレッジ(2237)は、S&P500指数のパフォーマンスに対して、2倍のレバレッジをかけて運用される上場投資信託(ETF)です。
インバース型投資信託とは?
次に、インバース型投資信託について見ていきます。
インバース型は、レバレッジ型投資信託とは逆に、市場が下落する際に利益を得ることを目的とした商品です。
一般的な投資信託と反対の動きをするため、下降相場を利用した投資方法となります。
インバース型投資信託は、一般的にベア型投資信託とも呼ばれます。
インバース型投資信託の仕組み
インバース型投資信託は、対象となる指数(例えば株価指数)が下落する際に利益を得ることを目的とした投資信託です。
通常、インバース型投資信託は、対象指数の値動きに反対の方向に連動するように設計されています。
インバース型投資信託の基本的な仕組みは、以下の4つです。
1.ショートポジションの活用
インバース型投資信託は、対象となる株式や指数を売る(ショート)ポジションを取ることによって、指数が下落した際に利益を得る仕組みです。
2.デリバティブ商品の利用
先物やオプションなどのデリバティブ商品を利用して、指数の逆方向に動くように運用されます。これにより、指数が下がると投資信託の価格が上昇します。
3.逆相関の運用
インバース型投資信託は、対象指数の値動きと逆相関(ネガティブ・コリレーション)を持ち、指数が下がると投資信託の価値が上昇するように設計されています。
4.レバレッジ型の存在
インバース型投資信託には、レバレッジをかけたバージョン(例えば、2倍や3倍のインバース型)があり、指数の下落幅を増幅させて利益を得ることを目的としています。
インバース型投資信託のメリットとデメリット
以下に、インバース型投資信託のメリットとデメリットを、それぞれ2つずつ挙げます。
メリット
①下落相場で利益を得られる
インバース型投資信託は、株式市場や指数が下落する際に利益を得ることができるため、下落相場でも有利に運用できます。特に市場が不安定な時期に効果を発揮します。
➁リスクヘッジ手段として利用可能
株式や他の資産が下落するリスクをヘッジする手段として利用できます。ポートフォリオに組み込むことで、全体のリスクを分散する役割を果たします。
デメリット
①長期間の保有には注意が必要
インバース型投資信託は日々の市場動向に応じて運用されるため、長期的に保有し続けることが適切でない場合があります。特にボラティリティが高い市場では、思わぬ結果を招くこともあります。
➁運用コストがかかる
インバース型投資信託は、デリバティブ商品を活用しているため、それに伴う管理コストが発生します。また、短期間で頻繁に取引を行うことにより、手数料やコストが増加する可能性があります。
インバース型投資信託の代表例
インバース型投資信託の代表例として、以下のような商品があります。
日経平均インバース型ETF(例:NEXT FUNDS 日経平均インバース上場投信)
日経平均株価が下落する際に利益を得ることを目的としています。
日経平均株価が1%下落すれば、ETFの価値はその分1%程度上昇します。
S&P500インバース型ETF(例:ProShares Short S&P500)
米国の代表的な株価指数であるS&P500の下落に対して逆相関する投資商品です。
S&P500指数が下落すれば、ETFの価値が上昇します。
ダウ・ジョーンズインバース型ETF(例:ProShares Short Dow30)
ダウ・ジョーンズ工業平均株価の下落に連動して値動きするインバース型ETFです。
ダウ30銘柄の株価が下落する場合に利益を得ることができます。
このようなインバース型ETFは、アメリカ市場における短期的な下落を見込んで投資する際に用いられます。
レバレッジ型とインバース型投資信託のリスク管理
最後に、レバレッジ型投資信託とインバース型投資信託のリスク管理について解説していきます。
これらの投資信託はどちらも高いリスクを伴うため、リスクを適切に管理するためには、投資戦略を構築することが重要となります。
投資信託を選ぶ際のポイント
レバレッジ型およびインバース型投資信託は、高リターンが期待できる一方で、高リスクも伴います。
そのため、これらの投資信託を選択する際には、リターンとリスクのバランスをしっかりと考慮することが重要です。
選択する際に注意すべきポイントは以下の2点です。
①リターンとリスクのバランスを評価する
高リスク・高リターンを目指す場合、リターンの可能性を追求するだけでなく、そのリスクも十分に理解することが求められます。
過去の運用実績やボラティリティ(価格変動幅)をチェックし、どの程度のリターンを狙うのか、またそのリスクを受け入れられるかを見極めましょう。
特に、標準偏差や最大ドローダウン(最大損失幅)を確認することがリスク評価に有効です。
➁高リスク商品には分散投資を心掛ける
高リスク・高リターンを目指す場合でも、適切な分散投資が重要です。
例えば、レバレッジ型投資信託や新興国株式、テクノロジー株などリスクの高い資産に投資する際は、複数の資産クラスに分散することでリスクを軽減できます。
これにより、特定の資産クラスの変動に過度に影響されないようにすることが可能です。
投資には予期せぬリスクが伴うため、適切なリスク管理で損失を最小限に抑えることが重要です。
まとめ
今回の記事のまとめです。
レバレッジ型投資信託は、証拠金や借入金を利用して通常の投資信託よりも大きな投資を行い、相場が上昇すると通常よりも大きなリターンを得られます。
一方、インバース型投資信託は、対象となる指数が下落する際に利益を得ることを目的としています。
両者は高リターンが期待できる一方で、高リスクも伴います。
そのため、選択時にはリターンとリスクのバランスをよく考慮することが大切です。