『相続時精算課税制度ってどんな制度?』
相続時精算課税制度は、相続や贈与の際に税負担を軽減できる制度として注目されています。
この制度を利用することで、相続が発生する前に贈与を行い、税金の支払いを先延ばしにすることができるほか、適切なタイミングでの資産管理も可能になります。
本記事では、相続時精算課税制度の概要や仕組み、実際の活用方法について詳しく解説します。
この記事で分かること
- 相続時精算課税制度の概要
- 相続時精算課税制度の活用方法
相続時精算課税制度とは
それではまず初めに、相続時精算課税制度の概要を見ていきたいと思います。
相続時精算課税制度には、利用者の制限や贈与の非課税枠の上限額が設けられており、一般的に利用される暦年課税とは異なる特徴があります。
ここでは、そのポイントを押さえておきましょう。
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制度の概要
相続時精算課税制度は、親や祖父母が生前に財産を子や孫(18歳以上の養子も含む)に贈与する際に利用できる税制上の特例制度で、特に高額な財産を非課税で一度に移転できるのが特徴です。
この制度に関する重要なポイントは、次の3つです。
1. 非課税枠の大きさ
累計で2,500万円までの贈与が非課税であるため、まとまった財産の移転が可能です。ただし、2,500万円を超える部分には一律20%の贈与税が適用されます。
2. 対象者の条件
受贈者は18歳以上の子や孫(養子を含む)で、贈与者は60歳以上の親や祖父母に限定されています。この制限は、世代間での資産移転を促すために設けられています。
3. 基礎控除の新設(2024年改正)
2024年の改正により、年間110万円の基礎控除が新たに導入されました。これにより、相続時精算課税の適用においても、毎年110万円の控除額が考慮されるようになっています。
参照サイト
利用しやすくなった相続時精算課税について | 日本FP協会
暦年課税との違い
暦年課税(れきねんかぜい)は、毎年の贈与に対して贈与税が課される制度であり、毎年一定の非課税枠内で資産を贈与することで計画的な財産移転が可能になる仕組みです。
ここでは暦年課税の3つのポイントを挙げ、相続時精算課税制度との特徴を簡潔に説明します。
1. 年間110万円の非課税枠
贈与者から受贈者への贈与額が年間110万円以内であれば、贈与税は発生しません。このため、家族間で少額ずつ定期的に財産を移転する際に有効な制度です。
2. 累進課税の適用
贈与額が年間110万円を超えた場合、超過分に対して贈与税が課税されます。税率は累進課税に基づき、贈与額の多寡に応じて異なります。また、受贈者が直系尊属(親や祖父母)から贈与を受けた場合と、それ以外の場合で適用税率が異なる点に注意が必要です。
3. 関係に制約がない
暦年課税制度の対象者には特に制限がないため、親から子、祖父母から孫、さらには親族でない友人間の贈与でも利用可能です。この柔軟性から、幅広い関係性の間で贈与を行いたい場合に適しています。
対象となる財産
相続時精算課税制度で贈与可能な財産には制限はなく、以下のような財産が含まれます。
現金
現金の贈与も対象です。
不動産
土地や建物などの不動産も制度の対象となります。なお、不動産の場合は、評価額や税務署への申告方法に注意が必要です。
有価証券
株式や投資信託などの金融資産も対象として認められています。
その他の財産
貴金属、骨董品、車などの動産も贈与財産として扱えます。
ただし、贈与した財産は相続時に再評価され、相続財産に加算して相続税の課税対象となるため、贈与時の評価額だけでなく相続時の税負担も考慮することが重要です。
相続時精算課税制度を活用することのメリット
次に、相続時精算課税制度を利用するメリットについて確認していきましょう。
この制度は、適用することで有利になる場合もあれば、逆に不利になる場合もあります。
そのため、状況に応じて慎重に判断することが重要です。
メリット
相続時精算課税制度を活用することには、以下3つようなメリットがあります。
①累計で2,500万円まで非課税
この制度では、累計で2,500万円までの贈与が非課税です。これにより、大きな金額を一度に贈与でき、通常の暦年課税と比べてより多くの資産を早期に移転できます。特に高額な財産を移転したい場合に有効です。
➁相続税の軽減
資産を生前に移転することで、相続発生時の相続税負担を軽減できる可能性があります。贈与時に贈与税が課税されないため、受贈者が将来的に受け取る財産の評価が低くなることが期待されます。
③計画的な資産移転
生前に資産を移転することで、相続時に家族間でのトラブルを避けることができます。贈与の際に事前に計画を立てることで、相続財産の分配を明確にし、円滑な相続を実現できます。
相続時精算課税制度は、将来値上がりしそうな財産を贈与する際に、贈与税を回避しつつ相続税負担を軽減するために有効です。
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デメリット
相続時精算課税制度にはいくつかのデメリットもあります。
以下にその主なポイントを3つ挙げます。
①相続税の負担増加の可能性
相続時に贈与された財産が相続財産に合算されるため、結果的に相続税が高くなる可能性があります。特に、贈与時に評価されていた財産の価値が将来的に上昇した場合、相続時の負担が大きくなることがあります。
➁選択の制約
一度相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税に戻ることができません。したがって、贈与の額が少ない場合や、相続時に必要な資産を考慮する際には慎重な判断が求められます。
③贈与者の年齢制限
贈与者は60歳以上の親または祖父母に限定されるため、若い世代の親が子に贈与する際には利用できない制約があります。
相続時精算課税制度を選択する際には、暦年課税に変更できないことに注意が必要です。
今後の財産状況や贈与計画を十分に考慮することが重要です。
相続時精算課税制度の活用方法
相続時精算課税制度の活用方法について詳しく見ていきましょう。
ここでは、この制度における贈与税の計算方法を解説します。
相続時精算課税制度における贈与税の計算方法
相続時精算課税制度における贈与税の計算方法は次の通りです。
{(その年に贈与を受けた財産の価額の合計額-基礎控除額110万円)-特別控除額2,500万円}×20%
各要素の説明
- 贈与を受けた財産の価額の合計
その年に受け取ったすべての贈与の評価額を合計します。 - 基礎控除額
毎年110万円は非課税として扱われます。つまり、贈与額がこの金額を超えた部分が課税対象となります。 - 特別控除額
累計で2,500万円が特別控除として設定されています。この金額を超える贈与には税金がかかりますが、すでに適用した金額がある場合、2,500万円からその金額を引いた残額が控除されます。 - 税率
最後に、残った課税対象額に20%の税率が適用されます。
相続時精算課税制度を活用する際の悩み
では最後に、相続時精算課税制度を活用する際の悩みについて見ていきます。
この章では、相続時精算課税制度を活用する際に相談できる専門家について解説します。
相談できる3つの仕業
相続時精算課税制度を活用する際には、以下の専門家に相談することが推奨されます。
税理士
相続や贈与に関する税務の専門家で、相続時精算課税制度の詳細や最適な贈与計画を立てるためのアドバイスを受けることができます。
司法書士
不動産の名義変更や遺言書作成など、法律的な手続きに関するアドバイスを提供します。相続に関連する手続きについて相談することで、スムーズな資産移転が実現できます。
ファイナンシャルプランナー
資産運用や相続対策に関する知識を持つ専門家で、全体的な資産管理の観点からアドバイスを行います。将来の資産形成や家族の生活設計を考慮し、贈与や相続の方法を提案してくれます。
ただし、注意が必要です。
専門家はすべての業務を行えるわけではないため、それぞれの役割を理解し、必要なサービスを明確にすることが重要です。
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まとめ
今回の記事のまとめです。
相続時精算課税制度は、親や祖父母が生前に子や孫(18歳以上の養子も含む)に最大2,500万円まで贈与を非課税で行える特例制度です。
受贈者は18歳以上の子や孫で、贈与者は60歳以上の親や祖父母に限られます。
2024年の改正により、年間110万円の基礎控除が新たに導入されました。
この制度は、計画的な資産移転が可能である一方、選択後に暦年課税への変更ができないなどのデメリットもあります。
特に、贈与者の年齢制限や選択の制約を考慮し、慎重に利用を検討することが重要です。