「退職金の受け取り方の違いって?」
退職金を受け取る際、多くの人が悩むのがその受け取り方法です。
その主な選択肢として『一括受け取り』と『年金での分割受け取り』の2つがありますが、
それぞれにはメリットとデメリットがあり、どちらが自身にとって最適なのかを理解することが大切です。
本記事では、一括受け取りの特徴を詳しく解説し、また年金での分割受け取りとの違いについてもご紹介します。
この記事で分かること
- 退職金の一括受け取りの基本概要
- 一括受け取りと年金受け取りの違い
退職金の一括受け取りとは?
まず最初に、退職金の一括受け取りの特徴について見ていきましょう。
この章では、一括受け取りを選択する際の具体的なメリットについて詳しく解説します。
退職金の一括受け取りの基本概要
退職金の受け取り方法には以下の3つがあり、それぞれ税金の取り扱いが異なります。
①一括で受け取る
一度に全額を受け取る方法です。退職金を一括で受け取る場合、所得税などが課税されますが、退職所得控除の範囲内であれば課税される金額は少なくなります。
➁分割して受け取る
退職金を数回に分けて受け取る方法で、年金形式に近い形です。将来にわたって収入を確保できるというメリットがありますが、税負担の面では、一括で受け取る場合に比べて軽減効果が低いこともあります。
③その両方を組み合わせる
一部は一括で受け取り、残りは分割で受け取る方法です。これにより、受け取る退職金の一部が控除額の範囲内に収まることで、税負担を軽減することができます。
退職金を一括で受け取るメリットとデメリット
退職金を一括で受け取る方法には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
①税金負担の軽減
退職金には退職所得控除が適用され、一定額までは非課税となります。控除の範囲内であれば、実質的に税金がかからず、または大幅に軽減されます。その結果、税負担が軽減され、手取り額が増加します。
➁生活設計の柔軟性
一度にまとまった金額を得ることで、老後の生活設計を立てやすくなります。貯金を切り崩して生活する、または事業を始めるための資金を確保するなど、自由に使える資金が手に入ります。
退職所得控除については、以下の記事で詳しく解説しています。
デメリット
①税金が一度にかかる可能性がある
退職金が退職所得控除を超える場合、一括で受け取ると超過分に対して税金が課されます。特に高額な退職金の場合、税額が大きくなり、その結果、手取り額が減少する可能性があります。
➁資産の使い方に注意が必要
一括で受け取った退職金を計画的に使わない場合、後々の生活資金が不足する恐れがあります。特に、退職金を一度に使い切ってしまうと、老後の資金が足りなくなるリスクが高まります。
退職金を受け取る前には、今後のライフプランを明確にしておくことが大切です。
一括受け取りの手続き方法
次に、一括受け取りの手続き方法について見ていきます。
一括受け取りが年金での分割受け取りとどのように異なるのか、その違いを中心に解説します。
一般的な退職金制度として、多くの企業で中退共制度が活用されています。
受け取り方法の選択
退職金を受け取る際、一括受け取りか年金形式での分割受け取りを選択する必要があります。
以下に、両者の違いを表にまとめました。
比較項目 | 一括受け取り | 年金での分割受け取り |
---|---|---|
税金の控除 | 退職所得控除が適用され、一定額まで非課税 | 公的年金等控除が適用され、毎年の所得税が軽減 |
税金負担 | 高額の場合、控除を超えた部分に税金がかかる | 毎年の収入として扱われるため、税負担が分散される |
受け取りの柔軟性 | まとまった資金を自由に使える | 定期的に一定額を受け取るため計画的な利用が可能 |
資金管理のリスク | 資金を一度に使い切ってしまうリスクがある | 長期的な資金管理がしやすく、生活費の安定に寄与 |
受け取りのタイミング | 退職後、数ヶ月以内に一度に振り込まれる | 毎年または毎月、決まった金額が振り込まれる |
老後の生活設計 | 住宅ローンの返済や事業資金など大きな支出に対応可能 | 老後の生活費として計画的に利用しやすい |
手続きの手間 | 一度の手続きで完了 | 定期的な受給手続きが必要 |
必要書類等の入手
退職金を一括で受け取るためには、いくつかの必要書類が求められます。
以下は、退職金の申請をスムーズに進めるために必要な書類です。
1. 退職金請求書
退職金の受け取りを申請するために必要な書類です。通常、勤務先の人事部門や総務部門から提供され、受け取る金額や方法を記入して提出します。
2. 退職証明書
退職金申請には、退職証明書が必要となる場合があります。これは、退職日や退職理由などを証明する文書で、会社から発行されます。
3. 給与明細書や源泉徴収票
退職金が給与として支払われる場合、過去の給与明細書や源泉徴収票が求められることがあります。これらは通常、会社の人事部門や税務署から発行されます。
4. 印鑑登録証明書(場合による)
一部の企業や退職金プランでは、印鑑登録証明書が必要となることがあります。
5. 住民税の納税証明書(場合による)
退職金の申請時に、住民税の納税証明書が必要な場合があります。
退職金に関する詳細は、別の記事でライフプランを踏まえて解説しています。
一括受け取り時に注意すべき2つのポイント
そして最後に、一括受け取り時に注意すべき3つのポイントについて解説します。
一括受け取りのメリットは、退職所得控除を活用することによる税負担の軽減や現金化が可能な点です。
しかし、退職金を一括で受け取る際には、いくつかの注意点も存在します。
退職金にかかる税金を理解する
退職金には、「退職所得」という特別な課税方式が適用されます。
また、住民税も課税されますが、ここでは退職所得の計算方法を示します。
退職所得控除
退職金を受け取る際には、一定額の控除(退職所得控除)が適用されます。
この控除額は、勤続年数によって異なります。
Ⓐ勤続年数20年以下の場合
退職所得控除額 = 40万円 × 勤続年数
Ⓑ勤続年数20年以上の場合
退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)
課税される金額
控除後の金額(退職所得金額)は、次の計算式で求められます。
退職金 - 退職所得控除 = 退職所得金額
その後、この退職所得金額の半分が実際に課税対象となります。
退職金控除については、以下の記事で詳しく解説しています。
老後資金のプランを見直す
老後資金のプランを見直すことは、退職後の生活を安定させるために重要な要素です。
老後に必要な資金の再評価
①生活費
老後に必要な生活費を計算し、退職後の生活スタイルに合わせて必要な資金額を再評価します。例えば、住宅ローンが終わったり、子供が独立したりすることで支出が減る一方、医療費や介護費用が増えることもあります。
➁医療・介護費用
退職後の健康管理や介護に備えるため、医療保険や介護保険への加入や見直しも有効です。
税金や年金の受け取り方の見直し
①年金受給開始時期
年金の受け取りを開始する時期によって、月々の年金額や税金が異なります。早めに受け取ることで、今後の支出に対応しやすくなりますが、税金負担が増えることもあるため、受け取り時期の決定には十分に配慮する必要があります。
➁確定拠出年金(iDeCo)や個人年金
iDeCoを活用して、税金控除を受けながら資産形成を行う方法もあります。老後資金を積み立てる過程で、税金対策も同時に行えるため、計画的に活用することが大切です。
老後のライフプランの有効化には、以下の記事等をご参照ください。
まとめ
今回の記事のまとめです。
退職金の受け取り方法には、一括で受け取る、分割で受け取る、両方を組み合わせる方法があります。
一括受け取りの場合、退職所得控除を活用して税金負担を軽減できますが、控除額を超えると一度に大きな税金がかかり、手取り額が減るリスクがあります。
一括受け取りのメリットは、税負担が軽減されることや、生活設計を柔軟に立てられることです。
しかし、使いすぎると老後資金が不足するリスクもあるため、計画的に使用する必要があります。
退職金を一括で受け取る際は、税金を理解し、老後資金計画を見直すことが重要です。