「退職金控除額って、勤続年数でどう変わるの?」
退職金の手取り額は、できるだけ多く受け取りたいものですよね。
しかし、実際には定年まで働き続けるだけでなく、転職や早期退職といった選択肢もライフプランに含まれることがあります。
そんな時、退職金の手取り額がどのように変わるのか、把握できると心強いですよね。
この記事では、勤続年数に応じた退職金所得控除の仕組みを解説し、早期退職と定年退職における控除額の違いについて詳しく見ていきます。
この記事で分かること
- 退職金所得控除の概要
- 早期退職と定年退職の退職金の違い
- 退職金所得控除を最大限に活用するためのポイント

退職金所得控除の求め方についても解説していますよ!
退職金所得控除とは?基本的な仕組みを解説
まず初めに、退職金所得控除の概要について見ていきましょう。
退職金所得控除は、その名の通り、退職金を受け取る際に適用される控除です。
しかし、この控除額には、勤続年数などの条件が設定されており、それによって控除額が変動します。
退職金所得控除の概要
先ほどご説明したように、退職金所得控除は退職金にかかる税金を軽減する制度で、所得税、住民税、復興特別所得税が軽減されます。

退職金所得控除の概要を、控除額や適用条件の観点から見てみましょう。
①退職金にかかる税負担の軽減
退職金にかかる所得税、住民税、復興特別所得税は、控除額を差し引くことにより、税負担を軽減することができます。
②勤続年数に応じた控除額
控除額は勤続年数に基づいて決まり、勤務年数が長いほど、控除額も増加します。
③控除を受けるための条件
退職金を受け取る際、退職所得の受給に関する申告書を提出することが必要です。
参照サイト
・A2-29 退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)|国税庁
退職金所得控除の計算方法
退職金所得控除額の計算方法は、主に以下の2通りです。

勤続年数によって、ⒶまたはⒷのいずれかが適用されます。
Ⓐ勤続年数が20年以下の場合
控除額 = 40万円 × 勤続年数
Ⓑ勤続年数が20年を超える場合
控除額 = 800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

上記で求めた控除額を退職金の収入金額から差し引くことで、退職所得を算出することができます。
退職所得の計算式
退職所得 =(収入金額(源泉徴収前の金額) - 退職所得控除額) × 1/2

そして、退職所得に対する課税税率を算出します。
退職所得金額に対する課税税率
195万円以下:5%
195万円超~330万円以下:10%
330万円超~695万円以下:20%
695万円超~900万円以下:23%
900万円超~1,800万円以下:33%
1,800万円超~4,000万円以下:40%
4,000万円超:45%
※各税率に応じた控除額が適用されます。
所得税に関する情報サイト
・No.2260 所得税の税率|国税庁
退職金の受け取り方の違い
退職金の受け取り方法には、主に一括受け取りと分割受け取りの2種類がありますが、これらの方法では退職金控除の適用方法が異なるため、注意が必要です。

分割受け取りの場合、基本的に「退職金」ではなく、「年金」の一種として扱われます。
一括受け取り
一括受け取りは、退職金を退職時に一度に全額受け取る方法です。

一括受け取りには、以下の2つの特徴があります。
①退職所得控除を活用できる
一括受け取りの場合、退職金にかかる税金は退職所得控除を適用して軽減されるため、税負担を減らすことができる場合があります。
➁資金調達が迅速にできる
退職金を一括で受け取ることで、老後の資金として一度にまとまった額を確保でき、生活設計や資産運用に役立てることができます。
分割受け取り
分割受け取りは、退職金を一度に全額受け取るのではなく、定期的に分割して受け取る方法です。

分割受け取りには、以下の2つの特徴があります。
①年金としての取り扱い
分割受け取りの場合、退職金は年金として扱われ、退職所得控除は適用されず、その代わりに公的年金等控除が適用されます。
②税金の軽減につながる
分割受け取りを選ぶことで、退職金の総額を複数年に分けて所得として計上するため、各年の課税額を抑えられる可能性があります。

なお、退職金にかかる税金には、以下の種類が含まれることをおさらいしておきましょう。

引用元:三菱UFJ銀行『退職金にかかる税金の種類』より
早期退職と定年退職で異なる退職金の扱い
ここからは、早期退職と定年退職で異なる退職金の取り扱いについて見ていきます。
先ほどの章で、勤続年数に応じて退職所得控除額が変動することをお伝えしましたが、退職金の額や税金の計算方法も、退職のタイミングによって異なる場合があります。
早期退職の場合の退職金の税金と控除額
早期退職と定年退職では、退職金の取り扱いや税金に関して異なる点があります。

早期退職と定年退職のそれぞれの特徴の違いを、以下に簡潔にまとめます。
税負担の違い
早期退職
早期退職では、退職金が早期に支給されるため、その年に課税される税金が大きくなる可能性があります。
定年退職
定年退職では退職金の支払いが退職金制度に基づいて行われ、受け取りのタイミングや金額は計画的に決めることができます。
受け取り後の違い(再就職への影響)
早期退職
早期退職後に再就職を考えている場合、退職金を分割で受け取ることで、税金負担を軽減しつつ、収入源を確保できます。
定年退職
定年退職後に再就職する場合、退職金を一括で受け取ると、再就職後の収入と合算されて税負担が増加する可能性があります。

ちなみに、退職時に活用できるサービスの一つとして、退職代行がありますよ!

退職金所得控除を最大限に活用するためのポイント
では最後に、退職金所得控除を活用するためのポイントについて見ていきましょう。
冒頭でもお伝えした通り、ライフプランによって退職金を受け取るタイミングは異なりますが、
退職金に限らず、有事の際に役立つ知識を身につけておくことで、予期せぬ事態にも冷静に対応できるようになります。
退職金を受け取るタイミングの最適化
退職金を受け取るタイミングは、年齢やライフプランに基づいて判断することが重要です。

退職金を受け取るタイミングについて、以下の3つのケースを挙げてみます。
1. 退職後すぐに生活費が必要な場合
退職後すぐに生活費を確保したい場合、一括受け取りを選ぶことで短期的な資金調達が可能となり、生活費や負債の返済、大きな支出に充てることができます。
2. 再就職を予定している場合
退職後に再就職を考えている場合、一時的な収入補填として退職金を活用できます。
3. 老後資金として長期間にわたって活用する場合
定年後の生活資金として活用する場合、分割受け取りを選ぶことで資金を確保し、年金収入を補完することができます。
退職金は老後の備えだけでなく、ライフプランにおける資金の確保など、さまざまな用途に活用できます。
そのため、退職金をどのように活用するかは、ライフステージに応じた柔軟な資金計画を立てることが大切です。

退職金の受給額を最適化するためには、まず自身のライフプランを具現化ことが大切ですよ!
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・ライフプラン表ってどんなもの?
まとめ
今回の記事のまとめです。
退職金所得控除は、退職金にかかる税金を軽減するための制度で、退職金を受け取る際に一定額が控除されます。
退職金所得控除の計算方法は勤続年数に応じて決まり、
勤続年数が20年以下の場合、控除額は「40万円 × 勤続年数」となり、20年を超える場合は「800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)」が控除額となります。
早期退職と定年退職では、退職金の扱いや税金に関して異なる点があるため、年齢やライフプランに基づいた適切な判断が重要です。