『特定支出控除ってどう活用するの?』
仕事にかかる費用が、意外にも所得控除の対象になることをご存じですか?
例えば、資格の勉強にかかる費用や、仕事で着るスーツ代など。
会社員の方でも、この特定支出控除を上手に活用することで、所得税を軽減できるチャンスがあります。
この記事では、特定支出控除の基本から、申告方法、具体的な支出例までをわかりやすく解説していきます。
この記事でわかること
- 特定支出控除の概要
- 特定支出控除を受けるための条件
- 特定支出控除の申請方法

特定支出控除の活用例も紹介していますよ!
特定支出控除の基礎知識
特定支出控除を活用するためには、どのような費用が控除対象になるのかを押さえておくことが大切です。
まずは、特定支出控除の概要を一緒に学んでいきましょう。
特定支出控除の概要
特定支出控除は、給与所得者(会社員)が仕事に関連する支出のうち、一定の条件を満たすものに適用される公的制度です。
たとえば、資格取得の費用や通勤の交通費、転居費用、仕事で使うスーツや制服代などが対象となり、確定申告を通じて控除を受けることができます。

主な特徴として、次の3つが挙げられます。
特定支出控除の3つのポイント
①対象となる経費は仕事に関連した支出に限定
②一定額を超える場合に適用される(上限65万円)
③確定申告を通じて申請が必要
どんな支出が対象になるのか?
特定支出控除の対象となる支出は、基本的に仕事に関連した支出であり、以下6つのようなものが該当します。
①資格取得の費用
業務に関連する資格取得のための受験料や受講料が対象です。
②通勤にかかる交通費
勤務先までの交通費で、会社から支給されない部分や自己負担している交通費が対象です。
③転居にかかる費用
転任や転勤に伴って発生した転居費用が対象となり、転任の日から1年以内に支出された費用に限ります。
④仕事に必要なスーツや制服代
勤務先で着用が求められるスーツや制服の購入費が対象です。
⑤出張費用や接待交際費
業務上の出張にかかる費用や取引先との会食費用が対象となります。
⑥セミナーや研修の参加費
業務に必要なスキルを向上させるためのセミナーや研修の参加費、教材費が対象です。

特定支出は仕事に関連していることが必要ですが、給与の支払者またはキャリアコンサルタントが証明したものに限ります。
参照サイト
・国税庁『給与所得者の特定支出控除とは』
会社員にとっての特定支出控除のメリット
会社員にとっての特定支出控除のメリットは、以下の3点です。
1. 税金の軽減
特定支出控除を利用することで、仕事に関連する支出が控除され、年間の税負担が軽減されます。
2. 自己負担の費用を経費として計上
資格取得費用や通勤費用など、自己負担している仕事関連の支出を経費として計上でき、税金を節約できます。
3. 上限65万円までの控除
一定額(最大65万円)を超える支出が控除対象となり、大きな支出がある場合には、その分税金が軽減されます。
一方で、特定支出控除には以下の3つのデメリットもあります。
1. 申告手続きが必要
特定支出控除を利用するためには、確定申告を行う必要があり、手続きが煩雑に感じることがあります。
2. 支出額が一定以上でないと控除が適用されない
特定支出控除を受けるには、年間の支出額が一定の基準を超える必要があり、その金額に満たない場合は控除を受けられません。
3. 証拠書類の準備が求められる
控除を受けるためには、支出を証明する領収書や明細書などの証拠書類が必要で、これを整理して提出する手間がかかります。
参照サイト
・国税庁『No.1415 給与所得者の特定支出控除』
特定支出控除を受けるための条件
では実際に、どれくらいの節税効果が期待できるのか? 気になるポイントですよね。
次にこの章では、会社員が申請できる具体的な支出例と、実際のシミュレーションについて見ていきましょう。
特定支出控除の求め方
特定支出控除の適用を受ける場合の給与所得金額の計算方法は、以下の4つのステップに分かれます。
①給与等の収入金額の算出
②給与所得控除額の算出
③特定支出の合計額の算出
④給与所得の金額の算出
そして、特定支出控除の計算式は、以下の式で求めることができます。
特定支出控除の対象となる額 = 特定支出の合計額 - 給与所得控除額 × 1/2

つまり、特定支出が給与所得控除額の1/2を超える場合、その超過分に対して特定支出控除が適用されるということですか?

その通りです。
給与所得控除額の1/2を超えた特定支出に対して、特定支出控除が適用されます。
収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額 × 40% - 100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額 × 30% + 80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額 × 20% + 440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額 × 10% + 1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
出典:国税庁『No.1410 給与所得控除』より
節税効果はどれくらい?シミュレーション例
ここでは、下記の条件に基づいて、実際の特定支出控除の活用例をシュミレーションしてみます。
前提条件
年収:3,000,000円
特定支出合計額:550,000円
費用内訳
セミナー参加費:50,000円(業務スキル向上のため)
業務用書籍購入費:30,000円(仕事に必要な専門書籍)
資格取得費:50,000円(業務に関連した資格取得)
引っ越し費用:420,000円(仕事先移転に伴う費用)
ステップ1: 給与所得控除額の計算
給与所得控除額は、年収に基づき以下の計算式で求めます。
給与所得控除額の計算
給与所得控除額 = 3,000,000円 × 30% + 80,000円
給与所得控除額 = 980,000円
給与所得控除額の半分
給与所得控除額の半分 = 490,000円

給与所得控除の半分を超過した費用が対象のため、給与所得控除の半分額を求めます。
ステップ2: 特定支出控除額の計算
次に、特定支出控除額を計算します。
特定支出控除を求めるために使用する金額は以下の2つです。
特定支出合計額:550,000円
給与所得控除額の半分:490,000円
これらを使って、特定支出控除額は次のように計算されます。
特定支出控除額 = 550,000円 - 490,000円 = 60,000円

給与所得控除額は、上記の図1をもとに算出しています。
詳細については、国税庁のサイトをご確認いただくか、専門家にご相談ください。

特定支出控除の申請方法
特定支出控除を活用するためには、確定申告での申請が必要です。
最後に、特定支出控除の申請方法について、具体的に確認していきましょう。
必要書類と申告の手順
お伝えしてきた通り、特定支出控除を受けるには、必要書類を準備し、確定申告を行う必要があります。
以下の3つのステップに沿って、申告を進めましょう。
① 必要書類の準備
申告には、以下の書類等が必要です。
・特定支出に関する明細書(国税庁のサイトからダウンロード)
・領収書・請求書(支出したことを証明するもの)
・給与所得の源泉徴収票(勤務先から受け取る)
・確定申告書(AまたはB)(国税庁のサイトや税務署で入手可能)
② 申告の手順
必要書類を準備したら、期限内に忘れずに申告しましょう。
1. 書類の作成
✅特定支出に関する明細書を作成
✅確定申告書に必要事項を記入
✅領収書や証明書を整理し、添付書類を準備
2. 申告方法を選択し提出
✅ e-Tax(オンライン申告) → マイナンバーカードが必要
✅ 税務署へ郵送
✅ 税務署へ直接提出

2月16日~3月15日の期間内に、上記のいずれかの方法で提出を済ませましょう。
確定申告に関して相談できるサイト
・税理士を料金だけで決めないなら、税理士紹介ネットワークへ
まとめ
今回の記事のまとめです。
特定支出控除は、会社員が仕事に関連して支払った費用の一部を所得控除できる公的制度です。
適用には確定申告が必要で、対象となるのは資格取得費、通勤費、転居費、仕事で必要な服装代などです。
また、控除を受けるには、支出額が一定基準(上限65万円)を超えることが条件となります。